ゲームスタート(8)

「それでは利点ですが、仮間瀬戌様の最初の利益は一千万円。生き残る度にレートの整数分だけ加算しましょう」

「つまり一回戦のレートが2だとしたら一回戦で脱落した場合は一千万円かける2で二千万円加算されるってこと?」

「その通りです。ご理解が早くて助かります。それが彼とゲームをする利点です。ご理解いただけましたか?」

 同意を促すようにマリオネは参加者の顔をうかがう。

「拘束具を使えば安全性も増すだろうし、さらに利点も魅力的だから僕は仮間瀬のゲーム参加には賛成かな」

 そう言って安食が賛同し、

「ボクは別に反対しないよ。犯罪者とゲームなんてスリリングでとってもすてきだ。とてもじゃないが普通に生きていて体験できるようなことじゃないよ」

 続いて、風火が同意する。

「他の方はいかがですか? 理解できないのでしたら一億円相当の優勝金額は諦め、今すぐお帰りくださいませ。引き止めは致しません。なお、ゲームが始まれば辞退はできませんのでご理解ください」

 脅しのようにも聞こえるその声を聞いても誰も辞退するものなどいなかった。

「それではまず、ゲームに参加するという誓約書にサインをお願いいたします」

 全員が辞退しないと決めた手前、それにサインしないわけにはいかないのだろう。

 和美が配った誓約書に全員がサインをしていく。

 マリオネがそれを受け取り、確認する。

「さてそれでは投票用紙をお配りします。全員に用紙が行き渡ってから一時間後、投票のアナウンスをいたしますので、この部屋にお集まりください。参加者様の個室に、食堂、遊戯室もございます。ゲームが始まるまでご自由におくつろぎください」

 マリオネがなぜかおれを見たのでとりあえずおれは頷いておいた。

 マリオネと和美が手分けしておれたちに投票用紙を配る。自分の名前が印字された、白い紙。それに名前を書けば、一瞬で脱落者が決まる。ある種凶器だ。

 おれはくつろげとは言われたものの、実質この一時間は自分に対する票をいかに減らし、誰を脱落させるかを模索する時間になるだろうと考えていた。

「それでは第一回戦レートは【1】でございます」

 マリオネがレートを発表する。このレートにすら何か基準があるのだろうか。

 おれたちが投票部屋から出て行くと無言で和美が一礼し、扉を閉めた。

 今から一時間。それが投票するまでに与えられた猶予。この一時間で誰に投票するか決める必要があるのだ。

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