ゲームスタート(5)

 その扉から入ってきた男を見て、全員が戦慄し凍りついた。おれの予感は当たっていたらしい。

 半年前、ある学校で生徒及び教師計三十八人を皆殺しにするという惨殺事件が起こった。

 犯人はその場で逮捕されたが、この事件は多くの関係者の心に傷を負わせた。当然、報道を見た多くの人々に最悪の印象を与えた。一週間以上ニュースでの話題がこれだったことを今でも覚えている。

 被害者家族の会が死刑を要求したにも関わらず、容疑者が未成年であること、そして兵器感染者だったこと、さらには「反省しています。許してください」という反省の言葉に心打たれた複数の陪審員によって、類稀な惨殺事件ではあるものの無期懲役という判決が下された。判決の結果をニュースで見た多くの人間に疑心を植えつけたのは言うまでもない。

 そしてその事件の犯人、大量殺人犯である仮間瀬かませじゅつという少年がそこにいた。

「それともなんですの。わたくしどもが犯罪者とゲームする利点があるとでも言いますの?」

 高飛車な女性、――胸のネームプレートには『戌亥いぬいエレナ』と書かれている――がおれの声に続いて異議を申し立てた。

「ございますよ。しかしそれは後々話をさせていただきます。ともかくまずはルールのご説明をさせていただきます。どんなゲームをするか気になるところでしょう?」

 マリオネの言葉だけでざわめきが一時的に終息する。

 一億円を手に入れるために集まったのだ。ルールを聞き逃して不利になるほど全員バカじゃないということだ。

「ルールは簡単」

 唾を飲む音が聞こえた。同時におれにも緊張が伝染する。

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