あの時、君は。

@johnjohn

17:00 自宅

  「神社、行かない?」

 

 涼子から連絡が来たのは今朝のことだった。

俺、啓太、真澄、涼子の四人で除夜の鐘を聞きに行こう、

という内容であった。

正直今日はテレビを観ながらゆったりと年を越したかったが、

真澄が来るという話であったので行くことにした。

 

二階の自室から階段を降りて一階にいる母の元へ向かう。

ギシギシと音をたてながら階段を降りていく。

少しつまずいた。備え付けの手すりに手をかける。

緊張しているのだろうか。そう感じながらリビングに入った。


 リビングに入ると、あちこち破れているソファーに

腰をおろして雑誌を読んでいる母が目に入った。

「母さん」 

少し高揚した声が出た。

「涼子たちと下の神社で鐘聞きに行ってくる」 

緊張した声が続く。

「そう。あんまり遅くならないようにね。涼子ちゃんによろしく」

母は対照的に少し残念そうな様子がしていた。

父が亡くなってもう3年になる。

俺がこの街を出れば、母はこうして一人で年を越すのか。

そう思うと、申し訳ないような悲しいような複雑な感情が芽生える。

部屋のカーテンが揺れ、冷たい風が顔に当たる。

「寒い」 

軽く震え、思わず声が出る。

「換気してるの」

そういいながら、母は手に持っていた雑誌を置きテーブルの上に置いてあった別の雑誌に手をかけた。




 

 

 


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