第322話 絶体絶命
「アリア、しっかりするである!アリア!」
「う……あ……」
サーシャがたどり着いた時、アリアはまともに喋れず、意識ももうろうとしていた。
「これと……これ、調合して……」
あまりにも酷いケガに、手持ちの薬では回復させるのは難しいとみて、戦闘している
にも関わらず、急いで薬を作り始めるが、その間にも周囲に敵が迫ってくる。
「クケケケケケ!」
「!」
遂に近くまで寄られ、攻撃される。
せめて、アリアに攻撃が当たらないように覆いかぶさるが、
「でぇりゃあ!」
それよりも早く、フィルの斧が敵を真っ二つにした。
「もう!一人で突っ込んだらダメだよ!」
「そうよ~。こういう時こそ焦りは禁物よ~。」
いつの間にか後を追ってきていたらしく、三人がサーシャとアリアを護るように
陣取っている。
だが、敵の群がる中を無理やり抜けていたらしく、至る所に傷がある。
スターナのみ、体力を考えてか、ダメージのほとんどをフィルが負っていた
らしいが、それでもボロボロだ。
サーシャ達がアリアの周りにいるからか、次哉も魔王相手に専念できている
ようではあったが、それでもダメージの蓄積は次哉の方が目に見えて増えている。
「助けに行かないと……いけないんだけど!」
「あ~もう!次から次に鬱陶しいわね!」
倒したはずの敵が、他の敵と融合したり、しぶとく立ち上がったりと、一向に
減らず、このままでは数に押しつぶされるのも時間の問題だ。
「……シャ、ちゃ……?」
「喋ったらダメである!」
アリアが残りの力を振り絞って、何かを伝えようとしている。
「勇……どの……たえて……」
サーシャの言葉を無視して――いや、聞こえてないのだろうか?言葉を続ける。
「だいじょ……一人……じゃな……あ、愛して……」
言い終わると、全身から力が抜けたようにぐったりとするアリア。
「アリア……?」
問いかけに指先一つ動かさない。
「アリアァァァァ!」
剣を交えていると、不意に叫び声が聞こえた。
嫌な予感がする……そちらを見たくはないが、見なければいけないような、
強迫観念に視線を動かすと、アリアを抱きかかえて必死に呼びかけている
サーシャの姿。
他の三人も慌てて駆け寄っている。
……想像したくない答えが頭の中を駆け巡り、不意に剣を持つ手が緩む。
「残念だったな。」
我に返って相手を見据えるが、剣を横に弾かれ、力の入っていなかった手は
剣を落とさないようにするのが精いっぱいだった。
魔王が剣を振り下ろすのが見えた。
一瞬、何故か懐かしい感じがして――
「ぐぅっ……あぁぁぁぁ!」
右腕が切り落とされた。
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