第318話 魔王復活

俺は一度大きく息を吸い込み、もう一度相手を見据える。

冷汗が頬を流れるが気にしている余裕はない。

落ち着け。多少トラウマになったくらいで、問題がある訳じゃない。

あいつよりデカい相手や素早い相手とも戦ってきたんだ。俺の苦手意識が

強いだけで、大した相手でもない。


自分に必死で言い聞かせて、何とか冷静さを取り戻す。

「――しゃ――!――者ど――!勇者殿!」

意識がハッキリしてくると周りの音も聞こえるようになってきた。


「勇者ちゃん、大丈夫!?」

「どうしたのよ、一体!?」

みんなが俺を心配そうに見つめてくる。


「……大丈夫だ。やれる。」

ここまで来て、今さら引いてられるか!

レリアは、まだブツブツと呟いている。今の内に!


そう思っていると、周りの骨が動き出す。

「何であるか!?」

骨は元の姿を復元しようとしつつ、さらに肉や血まで付着されていく。

だが、どこか歪になっており、体が異様に捻じれていたり、内臓やらが

むき出しになっていたりと、異様な風貌だ。


「ちょっと、数が多過ぎないかな~……」

「ですが、やるしかありません!」

周りのゾンビもどきも気になるが、レリアの様子がおかしい。

さっきよりも小声で呟いているため聞こえにくいがが、恨みの言葉どうこうより、

呪文を唱えているように聞こえる。


「みんな、ここを頼んでいいか?」

「もちろんです!」

「勇者ちゃんは、あの人をお願いね~!」

俺は五人にゾンビもどきの相手を任せ、レリアへと走り寄っていく。


数十匹ほどに襲い掛かられたが、一刀の元に切り伏せて、目標へと剣を振りかぶる。

そして……


「あ……がはっ!」

「な!?」


レリアは特に抵抗することなく、俺に斬られた。

あまりに容易く斬れた事に、俺自身が驚き、少しの距離を置く。

「何で、抵抗しなかった?」

「ふふふふ……これで、これで、あの人は私の物……」

体中から黒い煙を出しながら、俺とは逆の方向へと体を向ける。



「あぁ……私は死んで、貴方と一つになるの。絶対に逃がさない。あんな

石・なんかに邪魔はさせない。ドロドロに溶けて、貴方と交わって

未来永劫、愛し合うの……」


体から黒い煙を出し切ると、レリアは消滅した。が、前方に巨大な魔法陣が

生み出され、眩いほどの光が放たれた。

「くっ!」

腕で目を覆い、直視しないようにしたが、その魔法陣から一つの影が

ゆっくりと歩いて向かってくる。


正直、予想はしていた。

それは、レリアがあの女だったという事。しかし、心の中では違っていてほしい

と願っていたのだが、叶わなかったようだ。

光りが収まり、俺はその姿を見据える。




「久しぶりだな。――次哉・・

九条 一が、二度と会うはずの無かった兄が、俺の前に立ち塞がった。

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