第317話 ティリア……?

「愛する人……?」

「そうよ!」

俺を睨みつけるように叫ぶレリア。


「あの人は強く、優しく、何よりも美しかったわ!クズみたいな人間どもの中で

唯一、素晴らしい方なの!私はあの人の為なら、何でも出来る!」

レリアは震えて頭を掻きむしり始める。


「でも、せっかくこの世界に、あの人と繋がりのある人間がいたから

呼び寄せられると思ったら、過去なんぞに跳びやがって……」

過去だと?


「何の話をしている。」

「あの人を呼び寄せた時に、あんたは百年以上も前に行ってたじゃない!

そのせいで、魂が引っ張られて、過去に転移させることになったのよ!」

百年以上……もしかして、サラに過去に跳ばされた時か。


「そのせいで、私も過去に行くハメになって記憶と力を無くし、あの人も勇者

なんていうのに選ばれて命を落として……」

俺が過去に跳んだから、昔の勇者が生まれた?だったら俺が来た時点で、

昔に勇者がいたという話はおかしいはず。

タイムパラドックスっていうヤツか。自分が巻き込まれるとは思ってもみなかったが。


「私が記憶を取り戻した時には後の祭り。あの人は封印の為に命を落としていたわ。ティリア・・・・が必死に自分を取り戻そうと、私の邪魔をしていなければ、

もう少し早く記憶が戻せたのに……」

言ってる事がおかしい。ついに限界でも迎えたか?


「ティリア……って、貴方じゃないですか。正直、認めたくはないですけど。」

脳筋がそう言うと、こちらを一瞥して不気味に笑いだす。


「うふ、うふふふふ、あの役立たずなら、もういないわ。」

「え?」

レリアは顔を下に向け、目だけを大きく見開き、俺を見てくる。


「役立たずのくせに、ふふ、私とあの人の邪魔をしようとするから、魔鉱石を

使って、うふふ、取りこんじゃった♪」

「何ですって!?」

ティリアを取り込んだ?どうなってる!?


「せっかく、この世界で二人っきりで過ごそうと思ったのに、本当に上手く

いかない事ばかり……でもいいわ。もう、復活させられるし。」

「!? させるか!」

俺が剣を抜き、レリアへと向けて走り出そうとすると、ブツブツと呟き始めた。




「あの時も、あんたがいなければ、あの人は私を見てくれたのに……


憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、

死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、

憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、

死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね……」




耳が痛いくらいに心臓がドクンと鳴るのが分かる。

足が止まる。剣を持つ手が震える。

様子がおかしい俺に、みんなが何かを言っているのが分かるが、体が動かない。

吐き気と悪寒が止まらない。




「――もう一度・・・・殺すぞ・・・?」

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