第319話 望まぬ再会

「久しぶりだな。どうした、そんな呆けた顔して?」

懐かしい顔を見て、昔と変わっていない事に苛立ちを覚える。

会いたくなかった――それが、俺の偽らざる本音だったのだから。


「……まさか、兄貴が勇者だったとはな。」

「まったくな。俺も急に転移させられた時はビックリしたよ。最初は

右も左もわからなかったけど、まぁ何とかやっていけたって感じだな。」

俺が剣を向けているにも関わらず、笑みの一つも崩そうとしない。

余裕綽々の態度、それが更に神経を逆なでしてくるようだった。


不意に昔の感覚を思い出すが、魔王である以上は倒す必要が出てくる。

そう思い直して【見識】を使う。



九条 一 Lv0

HP:∞  MP:∞  ATK:0  DEF:0

INT:0  MGR:0  DEX:0  LUC:0

状態異常

【魔王】



何だコレは?HPとMPが無限で、それ以外が数値なしだと?

しかも状態異常が魔王?


俺が戸惑っていると、様子を見ていた兄貴が喋り出す。

「もしかして、俺のステータスを見たのか?【見識】だったっけ、それ結局、

手に入れられなかったんだよな。」

その声に我に返り、兄貴の方を見ると姿が無い!?


「あんまり、よそ見しない方がいいぞ?」

いつの間にか背後に立たれ、俺が気付いて振り向くと同時に、剣を振り下ろしてきた。

咄嗟に剣を構え、ギリギリで防御が間に合うが、尋常じゃない力に押し負ける。

「ぐぅっ!」

地面が耐えられなくなりヒビが入るが、それに合わせて横に逃げ、距離を取る。


「おぉ!一撃で殺せると思ったんだけどな。強い強い!」

俺が死ななかった事を拍手しながら称賛された。腹が立つ……!

ただ、ステータスが低いはずなのに、今の一瞬で移動した方法や、俺に力で

買った理由が分からず、唯一の状態異常を確認する。



【魔王】

魔紅石そのものになった証。思いが溜め込まれるほど強くなります。



たったそれだけの説明文。意味がますます分からなくなる。

「魔紅石?」

俺の呟きに反応し、口角をことさら上げて笑う姿が見えた。


「知っているのか?」

「知ってるも何も、これだろ?」

兄貴が上着を少しずらすと、肉体に赤い石が埋め込まれているのが見えた。

あれは――

「魔王が……いや、元魔王が持っていた宝玉だよ」

確か、魔王を倒した証拠として持って帰ったと、図書館で見た本に書いていた。


「これがあったから、俺は生まれ変われたんだ!ハハッ!」

やたら嬉しそうに、笑い声を上げる。


「それは一体、何なんだ!?」

「あー……、魔紅石は色々な負の感情を集めるアイテムってところか。」

説明するように、その後の台詞を続ける。


「この世界、魔法を使う時に使うものを精神力って言ってるだろ?さらに

魔鉱石ってのはそれを溜め込める。ってなるとだ、人の精神――感情やらを

溜められる石って事になる。さらに負の感情だけを溜め込んだ石、それが……」

魔紅石っていう訳か。


「これを使えるようにするには、相当の犠牲が必要なはずなんだけどな。

馬鹿な王達と、あのクソ女のおかげで復活できたよ。」

「どうして復活したのかわかるのか。」

「当たり前だろ。魔紅石が俺に怨嗟えんさの声を叫び続けてるんだよ。無残に

死んでいったヤツらの呪いだ!」


叫んだ兄貴の眼は狂気に満ちていた。

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