第315話 旅の終わりを告げる予感

「勇者殿……」

暗い表情の脳筋が近くへとやってくる。

どうやらジュッドの時と同じく、頭を倒すと他のヤツらまで動かなくなるようだ。


「ガナガ団長……本当に亡くなられたんですね……」

「あぁ、俺が殺した。悪いな。」

「いえ……」

脳筋の眉間にさらに深いしわが刻まれる。顔見知りの裏切りと死は、いくら脳筋と

いえど、キツイものがあったんだろう。


「あの、みんなを弔ってあげてもいいですか?」

「いいに決まってるでしょ。私達も手伝うわ。」

「そうである。」

倒れて死んでいる兵士達の元へ行き、街道から少し離れた場所に埋めてやる。

その間、特に脳筋が喋る事は無かった。

全員を埋め終わり、いつものように祈りを捧げる。ただし、女神にではない。


「女神の加護か。今更ティリアに祈る気なんぞ起こらんな。」

「今回の元凶のようなものだしね。」

それから俺達は戦闘場所からさらに離れ、野営の準備に取り掛かる。

戦闘前にガナガの魔法でダラは逃げてしまったから、目的地までは少しかかるが、

あと一日程度という事だったし、問題はないだろう。

サラには、重ねて詫びを入れなけらばいけなくなったが。


野営の準備を進めている最中も、脳筋の顔はずっと暗いままだったが、晩飯の

最中にポツリポツリと語り出す。

「私、正直に言えば、第5騎士団は苦手だったんですよ。」

まぁ見ていれば大体わかったが、今は話の腰を折らずに続けさせる。


それから、ガナガのしつこい求婚。魔術が使えないのに在籍していたため、

周りからの視線が痛かった事。女だからとバカにされた事。というか、

あの騎士団は性格が悪いヤツや、セクハラしてくるヤツが集まっていたと。

「本当に!顔を合わせるたびに、どっかしら触って来ようとして……!」

……いつの間にか愚痴に変化していた。


「でも、それでも、死んでほしいとは思わなかったんですけどね……」

「アリアちゃん……」

「魔王を、みんなで頑張って倒しましょうね。これ以上、犠牲者を出さないために。」

そう言うと吹っ切れたようで、いつもの脳筋に戻っていった。





一夜明けて、

「さてと、じゃあ出発するか。」

「ここまで来て、ダラ車が無くなったのは面倒くさいね。」

「言ったところで、どうなる訳でもなし。しょうがないわよ。」

俺達は、徒歩でクックルがあった場所を目指す。


もしかしたら、魔王はもう復活しているのかもしれない。過去の勇者が封じた

魔王……一体、どんなヤツなんだろうな。

旅の終わりは、すぐそこまで近づいていた。

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