第316話 決戦の場へ

野営した俺達は歩き出す。

時間が経つごとに、空気が重くのしかかってくるような感覚に襲われる。

比喩ではなく、実際にだ。


「何て言うか……何なんでしょうか、コレ?」

「それじゃ、わかんないわよ。いや多分、わかるんだけども。」

「体に変なのがまとわりついてるような感じね~。」

それを感じていたのは、俺だけじゃないらしい。どうにも不愉快にしかならないが、

脳筋が思い出したように話す。


「確か、クックル跡地って、怪奇現象があるんですよね。」

「怪奇現象?」

随分前に聞いたような……

魔物はその地に寄らない。無理やり連れてくると、自害するんだったか?


「魔王復活と関係あるのかな?」

「ここまで色々と揃っていて、無関係って事は無いと思うわ。」

面倒な話だ。





そして、遂にその場所へと到着した。

「本当に何もないである。」

「ここに首都があったって信じる方が難しいね。」

街ごと移転したおかげで、整地されただけの土地が姿を現しているはずだったが、

四年ほど経過しているため、それらもボロボロの状態になっており、見るも無残と

言った感じだ。


「さて、レリアはどこにいるか。」

「この辺りを探索しましょうか。」

俺達は跡地を歩き回る。

さすがに首都だっただけあって広いため、そう簡単には見つからない。


跡地には、そこら中に骨が転がっていた。

大きさや形から魔物のような物から、人の物と予測される物まで。

「酷い有様ね~……」

「来る途中には無かったのに、何でここの周りは大量に落ちてるんだろうね?」

「それらは生贄ですよ。」

不意に響く声に全員が、そちらに視線を送る。


「お待ちしておりました。」

そこにはレリアが一人、佇んでいる。

「お前が元凶だという事は分かっている。ウルムをそそのかしたのもお前だな?」

「人聞きが悪いですね。ウルム王は願いを叶えるために、自ら進んで計画を

実行したのです。私のせいではありません。」

あくまで人のせいであって、自分は関係ないか。イライラする。


「まぁ、もうどうでもいい。とりあえず魔王復活を止めてもらおうか。」

俺の言葉に首を傾げるレリア。

「何故です?やっと、勇者を……彼を復活させられるのです。それを止める理由など

見当たりませんが?」


コイツの元・勇者に対する執着は一体……

「お前が魔王討伐の手伝いをしていた事は知っている。だが、だからと言って

もう一度生き返らせてまで、倒す意味は何だ?」

「簡単な事です。」

レリアは腕を大きく広げて、声高に言い放つ。


「私の愛する人が魔王とともに眠り続けるなんて耐えられるわけがないじゃない!」

……コイツ、何を言い出した?

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