第314話 たった、それだけの為に

「あぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

ガナガが一際大きく叫ぶと、奇怪な音を立てて体の形が変わっていく。

「……随分と気色悪くなったな。」

顔が180度回転し、四つん這いで動くガナガ。体と顔は細くなり、逆に手足は

倍くらいの太さになっている。


「クカカカカ……」

奇声を上げながら口を大きく――頬は裂け、関節も外れ、口の奥が覗けるくらいに

大きく開くと、そこに炎が見えた。


「クカァ!」

その炎を口から吐き出すと、サイクロプスでも一飲みにしそうなほど急激に

大きくなり、飛んでくる。それを避けるが、次々と炎の玉が生成され撃ち出される。

速度は避けられない程ではないが、簡単に近づけないくらいには速く、仕方なしに

円を描くように近づいていく。


あと少しでガナガのところに辿り着けると思い、直線で向かっていく。

飛んできた炎は剣で切り裂き、反対側の手にある籠手で顔を覆い、突っ込んだが、

「クカカカカカ!」

屈んだかと思うと、勢いを利用して高く飛び上がり、遠いところに着地する。


「本当に気色悪いな……というか、お前の得意なのは水の魔法じゃなかったのかよ。」

何とはなしに浮かんだ疑問を口にするが、もうガナガには届いていないだろう。

体を揺らしながら、ケタケタと笑っているのを見ると、怒りを通り越して、哀れに

思えてきた。


「土よ。原初たる恵みの息吹よ。罰を犯す者に今一度、安らかな時間を

与えるため、その胸に抱きたまえ…ロックプレス!」

「クカ!?」

再度、攻撃を仕掛けようとして来る前に、土の魔法で押し潰す。が、ガナガも

必死に逃げている。左足が潰されても引きちぎり、残りの三本でもがきながら

這いずり出てきた。


それからも攻撃は変わらずワンパターンで、口から炎を吐き出すのみ。

速さだけはあるものの、ただそれだけ。

他の連中も、スターナとサーシャの広範囲攻撃で大体は片付けたようだし、

俺もそろそろ終わりにしないとな。


そう思い、ダッシュでガナガに近付く。

焦って炎を出しているが、さっきまで当たらなかったのが、急に当たるはずもなく、

飛んで逃げようにも、片足が潰されている状態。

苦労する事もなく、俺はガナガの目の前に立つ。


「クカ!クカカカカ――」

喚いてるヤツの首を、一瞬で切り離す。

首を無くしても、しばらくはもがいていたが、体から段々と黒い煙が出始める。


「ぼ、僕は、強くなったんじゃ……」

「悪いな。お前は弱かった。」

「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょ――」

恨み言を吐きながら、消滅していくガナガ。ジュッドの方が強かったし、

攻撃パターンはアッセムドゥか、暗殺者だかと同じ。

それで強くなったと言われてもな。


「その程度の強さを手に入れるために、人間を止めたのか。バカ野郎……」

知らず知らずに悪態をついていたが、それを止める事は出来なかった。

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