第295話 レリアの狙い

「クカ……カ……」

「な、何?いきなり止まった……?」

今まで戦っていた兵士達が急に動かなくなり、戦闘態勢のまま様子を伺う

フィルとリュリュ。

少しの間があり、兵士達が倒れていく。


「これ……やったの?」

「えっと、多分?」

半信半疑ではあるが、実際にピクリともしない兵士達を見て、おそらくは

倒せたんだろうと当たりを付ける。


「あ、兄ちゃん!」

この現象の原因と思われる人物を思い出し、そちらの方へ走っていく。

「ちょっと待って、フィル!」

突然走り出したフィルの後を追っていくリュリュ。





「水よ。深き生命の源よ。傷付き倒れた者の清らかな魂を癒したまえ。

キュア!」

攻撃で受けた傷を治しつつ、ジュッドに目をやる。

二つに分けたはずの体だが、手や足をバタバタと動かしている。

そして段々と黒い煙が出始めてきた。


「ク、カ……」

目に見えるほどに崩れ始めてきたジュッドの側に影が見える。

いつの間に立っていたのか、レリアがそこにいた。


「……これで、これでやっと、あの人に会える。ふふ……」

「おい。」

恍惚とした表情でジュッドを見つめ続けているレリアに剣を向けるが、

気にした様子もなく、笑い続けている。


「お前は何がしたかったんだ?」

「決まってます、魔王の復活ですよ。」

「……倒すのが目的じゃなかったのか?」

「もちろん。魔王を復活させたら、今度こそ殺せるじゃないですか。

そうしたら   を……」

今のは……

サベルやエーディが話していた時に聞いた”聞こえない名前”の相手。

そいつが魔王なのか?何故だ?

夢の中では、そいつは魔物と戦っていたと言っていたはずだが……


「ふふふふ……では、私はこれで。早く会いに行かないと。」

「待て!」

そのまま消えようとするレリアに斬りかかろうとしたが、壁に消えていき、

剣が当たる事はなかった。


「……逃げられたか。」

「兄ちゃん、大丈夫!?」

「フィルに詐欺師か。あぁ、問題ない。そっちは?」

「平気よ。特に大怪我はしてないわ。」

兵士達の相手をしていた二人が俺のところにやってきたが、二人の方も

重傷は負ってないみたいだが、かすり傷などがところどころ見られたので、

回復魔法をかけてやる。


「さて、ここにあまり長居するのも問題があるな。」

という事で、来た道を戻ってさっさと外に出る事にした。


「このお城、どうなっちゃうんだろうね?」

「王様が居なくなったからね。でも、ジュッドは地下にいた訳でしょ?

誰か代わりの人が政務をやっていたんじゃないの?」

「そうだといいがな。」


多少の話をしながら外に出ると、いつの間にか夜が明けていた。

これから先をどうするか決めないとな。

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