第296話 一休み

「ふぅ……サッパリしたぁ~。」

「あの集団と戦ったら、いつもより汚れた気がするのは、何でかしらね?」

ゾンビみたいなもんだからしょうがないと言えば、しょうがない。

今は宿に戻ってすぐ風呂に入り、一息ついたところだ。


「できれば、あんなヤツらとは二度と戦いたくないけどね。」

「いや、おそらくそれは無理だろうな。」

城の中で見た、人間の死体に黒い煙を出す物体を入れると、薄気味悪い

状態になって甦る現象。

おそらく、あの煙を出す物体はよく見えなかったが……魔鉱石なんだろうな。

なら、魔鉱石がある限り、あのゾンビもどきは作られ続けるという事だ。

本当にそうなのか確証はないがな。


「憂鬱になる事、この上ない話だ。そして、レリアが関わっていたという事は

黒幕はどうやらというか、何というか。あの男・なんだろうな。」

「アンタ、予想が付いてるの?」

「まぁな。」

状況が状況だけに、それ以外の人間が思い浮かばない。次に行くのは

ヴァファール王国か。


俺は二人に次の目的地を告げる。

「あ~、あの国ね。」

「ボクは行った事がないから、ちょっと楽しみかも。」

「とりあえずは他の三人を待つか。」

今はどこにいるかわからないが、脳筋、サーシャ、スターナと合流してから

行動に移るようにする。


「それまでは休みだな。」

「じゃあ、街でも見回ってみましょうか。……寝てから。」

「だね。眠いもの。」

そうして俺は一人になり、部屋でゆっくりとベッドに体を預けた。





どのくらい寝ていたか。目を覚ました時には日は落ち掛け、町全体を

オレンジ色に染めていた。

「……寝すぎた。」

昼くらいには起きるつもりだったんだが、予想以上に疲れていたらしい。

怠く感じる体を動かし廊下に出ると、ちょうどフィルが扉の前を通ろうとして

いたらしい。

「うわっと……」

驚いてバランスを崩したフィルの腕を掴み、自分の体側に引き寄せた。



「きゃっ!」



……きゃっ?

なんかあまりフィルが使わない言葉を聞いたような気がするが……まぁいい。

「悪い、大丈夫か。」

声を掛けたものの、何故呆けているフィル。


「どうかしたか?」

「……へ?あ、いや、別に。」

様子がおかしかったので、ステータスを確認してみたが、特に問題はない。

だとすれば体調でも悪いのか?

と思い、額に手を当てて熱を測る。

これも特に問題ない……いや、何だ?熱くなってきてるような……


「具合悪いのか?」

「う、え?具合……悪いのかな、ボク?」

やはり何かおかしいな。


「あまり歩き回らないで、部屋で寝ていた方がいいぞ。」

「あ……うん。」

戻るように促すと、大人しく従ってくれたが、その最中ブツブツと呟いていた。

「ん~?あれ~?何だろうコレ?」


本当に大丈夫か?

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