第286話 エーディとの戦い その三

エーディの姿は、全身をむき出しの筋肉が覆い、腕は硬質化した骨が、

剣のように形状を変えていた。

「あ、ははははは、あはははははははは!これで負けてやる事は出来なく

なった訳だけど……まだやるよね?まぁ、嫌だと言っても聞かないけど。」

アリアに対して挑発のようなセリフを飛ばすエーディ。


「大丈夫ですよぉ、逃げたりしませんからぁ。」

言うが早いか、アリアがエーディに斬りかかる。が、武器と化した自分の

腕を前に出して、それを防ぐ。


「おっと、当たらないね。」

「ふふっ、ざぁんねん♪」

それから二人は斬り結び続ける。スピードはアリアに分があるだろうか?

なるべく相手を翻弄しながら攻撃を仕掛けようと、周りを縦横無尽に

跳び回り、剣を叩きつけていく。

一方のエーディは力で優っているようで、立ち位置を変えず、円を描くように

体の向きだけを変え、攻撃してくるアリアを弾き返している。


そうこうしている内に時間だけが経っていく。

「アリアちゃん……大丈夫かしら……」

「もう時間もないである。」

スターナと、ずっと押さえつけられ、ようやく少しの冷静さを取り戻した

サーシャの心配の種は残された時間について。

次哉から聞いているのは、暴走した状態は三十分しか続かないという事。

だが、長い戦いのせいで、それももうすぐ切れてしまう。


「やっぱり加勢に入った方がいいである。」

「せめて転移が有効になれば……」

冷静になったとはいえ、憎しみが募り好戦的になったサーシャと、相手との

彼我戦力差を考えるスターナは意見が食い違い、結論は出ないまま。


「もう!さっさと斬られてくださいよ!」

中心にいるだけのエーディとは違い、動き回っているアリアは消耗が激しい。

その証拠に鎧以外の部分に、どんどんと傷が追加されていく。

暴走しながらも、内心焦っているアリアの思いとは裏腹に決定打を与えられず、

遂にその時が来た。

「ぐっ!」

「もらったぁ!」

暴走が収まりそうになり、アリアの足が一瞬止まる。その隙を逃さず、

エーディは渾身の力を込めて、叩き切ろうとする。


「アリアちゃん!」

「アリア!」

二人が叫び、スターナの方は用意していた魔法を発動させるが、強さをまだ

見誤っていた。

今までにない速度で腕を振るわれ、間に合うかギリギリのタイミング。

最悪の事態が頭をよぎった時、



「なっ!」

「クケケケケケケケ!」

ガーゴイル――サーシャの祖父が上半身だけでエーディにしがみついていた。



「離せ!……ぐぅっ!」

身動きが取れなくなったところに、スターナの魔法を浴びせられ、大した

ダメージではないにしろ怯んだところに、眼前に立つアリアの姿。


「おしまい……ですよぉ?」

エーディは真っ二つにしようと放たれた剣を受け止めようと、腕でガードする。

力は自分の方が強い、これを弾き返して反撃すればいい。そう思っていた。


パキィィン!


乾いた音が鳴り響き、腕は切り落とされる。エーディの方も、アリアの実力と

神鉱石で出来た剣を侮っていた。

刃は勢いを落とさず、袈裟懸けに肉、骨、内臓へと滑り込み、最後には

体を通り抜けた。


瞬間、エーディは自らの敗北を悟った――

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