第285話 エーディとの戦い その二

「あれ……?ちょ……っと、ヤバい……?」

殺そうとしたはずの相手に剣を受けられるどころか、単純な力でもって

押し返されそうとしている。

魔物化する前から――いや、魔物化した後だからこそ、余計に力が強くなって

いるはずの自分の腕力が負けると信じられないエーディは、全力で押し返そうと

するが、相手にならない。


「あれぇ?それだけぇ……ふふ、なんですかぁ?」

剣を片手にゆっくりと立ち上がり、今度はアリアが仰け反るエーディを見下ろす

格好になる。


「いくら何でも、怪力過ぎるだろっ!」

エーディは先ほど同様に前蹴りを放つが、膝を上げて受け止められた。

「あはっ♪同じ手を使ったら、女の子は飽きちゃいますよぉ……」

アリアはそのまま、蹴りに使われた逆の足の膝を上から蹴りつける。


「うおっ!?」

「隙ありです。」

体勢を崩して、後ろへ倒れこんだエーディへ、アリアの斬り下ろしの一撃が

振るわれる。

「ちぃっ!」

その剣を避けるため、必死で横に転がり、何とか事なきを得た。


「……いきなり強くなりすぎじゃないかな?」

「え~?そうですかぁ?」

楽しそうに剣を振り回す姿に、後ずさるエーディ。





「ふーっ!」

「待って、今は攻撃しちゃダメ!お願いだからいい子にして……!」

暴れようとするサーシャの口を押え、小声で告げるスターナ。

アリアの様子を見て、近くにいたら標的になると考え、サーシャを抱えて、

逃げるとまではいかなくても、近くの木陰に身を隠していた。


今は、エーディの持つ道具のせいで転移魔法が使えない状態。そんな時に

バーサーカー状態になっているアリアに狙われたら、死ぬしか道はない。

そのため必死で隠れているのだが、祖父を駒のように扱われたサーシャの

怒りは収まらず、危険を顧みず攻撃しようとしている。

それを上から覆いかぶさって止めている状況だ。


「出来れば、アリアちゃんのタイムリミット丁度で決着が付いてくれると

嬉しいんだけど……」

スターナの思惑に沿うかどうかは定かではないが、二人は構え直し、

斬り合いを始める。





「どぉ~んどん行きますよぉ。」

アリアの剣戟に何とかついていくエーディではあるが、真っ当な剣術だけでは

なく、フェイントや思いがけない方向からの攻撃に苦戦を強いられている。

「ぐっ……!重い……!」

「女の子に重いとかぁ……紳士的な態度ではないと思いますぅ……」

どうやら全力を出してはいないようではあるが、それでもアリアの勝利は

揺るがないように見える。


エーディは何とか一旦、距離を置き、剣を捨てる。

「? 降参ですかぁ?」

「いや、そんなんじゃなくて……ね……」

エーディの体が盛り上がり、内側から力を加えられた鎧はひしゃげ、外れていく。

筋肉が生き物のように蠢き、骨が形を変え、腐った肉は溶けて地面に落ちる。


「う、ぐ、くうぅぅぅぅぁぁぁぁぁ!」

叫びながら、エーディはさらなる異形へと姿を変えていった。

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