第281話 思いがけない再会
「ここが、サーシャちゃんのお家なのね~。」
「そうである。我が輩がおじいちゃんと一緒に住んでいたである。」
三人はスターナの転移魔法を使い、山の中にある家まで跳んできていた。
サーシャが居なくなってから、誰も掃除をしていなかったため、ホコリや塵が
薄っすらと積もっている。
「せっかくだから掃除しませんか?サーシャちゃんもお家が汚いままでは
嫌でしょうし。」
「いいであるか?」
「問題ありません。それに勇者殿達と合流するのが少し遅くなっても、勇者殿が
いますし。」
「それもそうね~。」
という訳で、家の掃除を開始する事になったが、思ったよりも汚れていたため、
大掃除の様子を呈した。
「フンフ~ン♪」
スターナは鼻歌を歌いながら、ぞうきんを絞っている。
「楽しそうですね。」
「えぇ、お城だと掃除なんてやらせてもらえないし、こうやってみんなで
部屋を綺麗にしていくのは楽しいわ。」
そういえば、スターナは女王なんだったと今更ながらに思い出し、もしかして
不敬なんじゃないかと思ったが、まぁいいかとすぐに考え直す。
あまりこういう事は深く考えない性質なのだ。
「サーシャちゃんは何してるんですか?」
「薬を入れる容器はちゃんと洗ってあげないと、使えなくなるである。」
サーシャは片っ端から瓶や袋を水に漬け、専用の布で綺麗に拭き、磨いている。
「できるなら持っていきたいであるけど、さすがに大荷物である。」
思い出の品でもあるそれらを、丁寧に洗っている。
時間は過ぎ、
「これで大体、掃除し終わりましたかね。」
「ん~……こんなに疲れる物なのね~……」
「二人ともありがとうである。」
伸びをしながら言うアリアとスターナに、頭を下げるサーシャ。
「いいんですよ。私達がやりたくてやったんですから。」
「そうよ~。サーシャちゃんがそんなにかしこまる必要ないんだから。」
そんなサーシャの頭を二人して撫でる。
「それにしても遅くなっちゃったわね。」
「せっかくだから、止まっていってほしいである。」
「そうですね。せっかくですから、お言葉に甘えさせて頂きましょう。」
サーシャの家に泊まる事にした三人。食事を済ませ、風呂にも入り、後は三人で
布団に入って明日を迎えるだけと眠りに付いた。
そして深夜、
「む~……トイレ~……」
サーシャが寝ぼけ眼を擦りながら、お手洗いの方へと歩いていく。
用を足し、ベッドに戻ろうとした時、窓に人影が見えた。
その人影に一瞬で目が覚めたサーシャは、家から飛び出し後を追う。
人影は付かず離れず、一定の距離を保ってサーシャを呼んでいるようだった。
足をもつれさせそうになりながらも、必死で追いかけた先は、森の奥の少しだけ
開けた場所。
月が照らし出す姿に、呆然とするサーシャへ声がかかる。
「久しぶりじゃの。元気にしておったか?」
「おじい……ちゃん……」
死んだはずの祖父と慕うガーゴイルの姿があった。
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