第280話 エツの現状
「さてと、もうちょっとでエツかしらね~……」
「気持ち悪いである……」
「……あ~、水~……水が欲しいです~……」
スターナ、サーシャ、アリアの三人はダラ車を使い、エツの
近くまで来て、今は徒歩で向かっている状態だ。
別れると決めた場所、そこからほどなくのところに街があり、次哉が
言ったような、おかしな者はいなかったように見受けられた。
そのため、街でダラ車を借り受け、エツの近くまで走ったのである。
ダラ車でエツまで行かなかった理由は単純に酔ったからだ。
さすがに限界が近いという事と、転移魔法で跳んでも、おそらく無理
だろうという事で選択肢は一つしかなかったのである。
「ふぅ、慣れたと思ったけど、さすがに長距離乗り続けるとキツイわね~……
そういえば、サーシャちゃんのお家って近いの?」
「そうである。あそこの山を越えて一日半くらいの場所である。」
そう言うと、サーシャは家の方角を指す。
「あ、じゃあ、街の様子を確認したら、行ってみましょうか?」
「いいであるか?」
「もちろんよ~。」
「やった!」
子供らしさを取り戻したように喜ぶサーシャ。その様子を二人は微笑ましく
眺めていた。
それから、さらにしばらく歩き続け、ついに門の前にたどり着くと、
不意にサーシャが立ち止まる。
「どうしたんですか?」
「本当に大丈夫であるかね?」
どうやら、エツの住人が魔物になっていないかを心配して、二の足を
踏んだらしい。
「サーシャちゃん、きっと大丈夫よ。何にせよ、確かめない事には。
そのために来たんでしょう?」
「……うん。」
スターナの声に少しの勇気をもらい、街中に入っていくと待っていたのは――
「サーシャじゃないか。今まで、どこ行ってたんだ?」
「おや、随分と久しぶりだね。元気かい?」
「ちょうど良かった、切り傷に効く薬無いかな?」
前と変わらぬ住人の姿。それに安心したサーシャは満面の笑みを浮かべ、
薬を売り歩き始めた。
「よかったですね。」
「本当に。」
ここに来るまでは、元気なそぶりをみせていたが、やはりどこか無理を
していたのだろう。表情が一変している。
薬売りをしながら三人は街を見回ったが、怪しい人物も見つからず、特に
問題はなさそうだと判断し、次にどうするかを相談する。
「とりあえず、ここで一泊してから、明日サーシャちゃんのお家に
行ってみましょうか?」
「そうですね。」
「分かったである。」
その意見に反論はなく、エツで宿を取って泊まる事になったが……
「う~……」
「む~……」
「あら~……」
久しぶりに次哉と離れた状態で宿に泊まったため、髪を梳いてくれる人が
居ない上に、近くで寝れない事に不満タラタラの三人だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます