第279話 これから

「そんな……」

「聞いた事がないよ、人が魔物になるなんて。でも……」

夜、野営をしている時に夢、ティリアで見た本、商人から聞こえた話、

昼に起こった襲撃、それらを包み隠さず話した。


「俺の話を信じるのか?」

「アンタ、嘘付くくらいなら下手な誤魔化ししようとするじゃない。」

心外だな。


「でも、それじゃあクアーズ王国の人達は全員、魔物になってるっていうの?」

「そんなの嘘である!」

スターナの言葉にサーシャが叫ぶ。しょうがないので、持ち上げて膝の上に

乗せ、頭を撫でてやると、多少は落ち着いたようだ。


「ごめんね、配慮が足りなかったわ。」

「お前が気にする事じゃない。……サーシャ、聞いたのはあくまで、首都での

様子だ。エツまで被害がいってるとは限らないから落ち着け。」

「……でも。」

サーシャはやはり、あの場所にいた連中が気になるんだろう。俺の話にも

納得はいってないようだった。


「だったら、こうしましょう。二手に分かれるの。」

「二手?」

「そう。まず勇者ちゃんと他に二人、私とサーシャちゃんで他に一人の

チームを作るの。」

「それで俺達は首都に、スターナ達がエツに向かうって事か。」

それもいいかも知れない。だが、どうせなら――


「どうせなら自分一人で行って、他のみんなを首都から離そう。とか

考えてるんでしょ、アンタは。」

詐欺師が、余計なところを突いてきた。

「言っとくけどね、ここまで来たら一蓮托生なの。アンタ一人を危険な目に

合わせる訳にいかないでしょ?」

「しかしな……」

「しかしもかかしもないわよ!」

耳元で叫ぶな。というかお前の古臭い言い回しも久々に聞いたな。


「そうです。勇者殿が置いていくつもりなら、無理やり付いていきますからね。」

「僕もいろいろと返さなきゃいけない恩があるし。」

「ワタシも、もちろん一緒に行くわよ~。」

「……我が輩もである。」

離れていってくれれば良かったのと思いつつ、安堵している自分がいた。


「それじゃあ、勇者ちゃんと、リュリュちゃんと、フィルちゃん。

ワタシとサーシャちゃんに、アリアちゃんのチームでいいかしらね?」

「おい、その分け方は……」

「大丈夫よ~。」

以前、脳筋に買った【狂戦士の指輪】だが、捨てろと言っても、絶対に

捨てやがらない。なんでも俺から貰った指輪を捨てるなんて死んでも嫌だと

言っていたが、確かにそれを使えば強さが格段に上がる。

だが、リスクが高すぎる。


「多少のリスクは負わないと、何か起きた時に対処できないでしょ?

それにアリアちゃんなら、通常でも強いし~。」

「私、リスク扱いですか……」

あ、脳筋が凹んだ。

スターナがそれに謝り、フィルと詐欺師が慰め、サーシャも少し笑っている。

……本当はこのまま何も起きないで、平和な日々が続けばいいんだが。

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