第278話 事態は……

国境の町を越えて、俺達は首都に向かって歩き出していた。

「ねぇ、何か心配事でもあるの?」

「少しな。」

「まぁいいけど、私達にも事情くらい教えなさいよね。」

「その内な。」

夢で見た事が不安だからという訳にもいかんし、いつ切り出すか?

不服そうだが、今は急いで確認するしか方法が無いか。

五人が深く追及せずに付いてきてくれるのがありがたい。


そうして道を歩いていると、ヒュンという音とともに弓を射かけられたので、

それを弾き返す。

「誰ですか!?」

「ケケケケケケケケ!」

うっすらと見えた後姿は、森の奥に逃げていった。


「俺は後を追う。お前らはここにいてくれ。」

「ですが……!」

「頼んだぞ。」

それだけ言って、走り出した。




こんな何もない場所で攻撃してくるのは、無計画だからなのか……

相手は逃げようとしているが、俺の方が早く前に回る事が出来た。


「クケケケケ!」

「……」


浸食されしモノ Lv5

HP:75  MP:0  ATK:24  DEF:17

INT:1  MGR:10  DEX:36  LUC:6


後姿から普通の魔物ではない予感はしていたが、やはりというか。

それは洋服を着て、靴を履き、皮膚が溶け、目は垂れ下がり、蛆が沸いて、

肉が千切れかけている……

夢で見た覚えのある、人間だったはずのモノ・・

エーディと同じ状態になっているそれは、やたら気味の悪い笑顔を浮かべ、

高笑いを続けている。



”何より恐ろしいのは――人が魔物になっていくのです。

人間の形が保てなくなり、異形となり果てる人が絶えませんでした。”



事態はもうここまで深刻になっているのか。

俺が少し考え事をしている隙を狙い、そいつは飛び掛かってきた。

「ケキャアァァァァ!」

俺は剣を素早く抜き、縦一文字に斬ると、左右に分かれたそいつが、俺の

横を通り過ぎ、地面へと倒れ伏す。

せめて一瞬で殺したのが、情けだとでも思ってくれ。

心の中で呟き、五人の元へ戻ろうとした。


「ク……ケケ……」

声が聞こえた。

振り向くと、手を必死に動かして自由にならない体をどうにか起き上がらせ

ようと必死だったが、その内に動きが緩慢になり、今度こそ動かなくなった。

「チッ……」

胸糞悪い光景に、思わず舌打ちが漏れ、その場をさっさと立ち去る事にした。




「あ、兄ちゃん。」

「大丈夫だったであるか?」

「あぁ。」

心配して寄ってきたサーシャの頭を撫でてやる。


「それで、敵は?」

「……倒した。が、言っておかなければいけない事がある。」

俺は落ち着ける場所に移動したら、全員に事情を話すと決意した。

信じなければ信じないでいいし、もしも魔王と戦いたくないから離れたいと

いうのなら、その方がいいに決まってる。無駄に危険に晒したくもない。


未だに分からない事が多過ぎるが、それでも俺は行くしかなさそうだからな。

この世界の勇者とやらになった運命というものが重くのしかかってきた。

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