第271話 騒動解決
「何ですか、今の……」
「ねぇ、もしかして……」
「想像してる通りだと思うが、確証はないな。」
前に見た魔鉱石から魔物が生まれる瞬間、死んで煙になっていく様……
サベルが変身する時、それに死ぬ時と似通っていた。
「二人して隠し事ですか、酷いです。」
頬を膨らませて脳筋が拗ねているとアピールしてくる。面倒くさいな。
「どうしよう?あれ、教えてもいいのかな?」
「……ふぅ、しょうがない。全員集まったら説明するか。」
俺達はスターナ達のところに急いで向かう事にした。
「あ、勇者ちゃん。」
合流した時にはすでに事態は収束していたのか、大きな騒ぎは起きていない。
「そっちの首尾はどうなった?」
「ギリギリだったわ~。街に突入する前に食い止められて、人質になっていた
子供達も助けられたから、何とか収まったって感じね~。」
合流場所は、街がギリギリ見えない程度の森の中。
もし少しでも変な動きがあったのが見つかれば、リザードマンが攻めようと
してきたという話が広まっていただろうから、ちょうどここが分水嶺だったか。
「ヅギャの方は平気だったである?」
「あぁ、問題ない。」
「サベルはどうなったである?」
「倒した。もう嫌がらせのような事は起こらんだろう。」
「そうであるか。」
そう言うと、サーシャも少し安心したような顔になる。サーシャもいろいろと
思うところがあったんだろう。仲のいい人を傷付けられたりもしたしな。
周りを見てみると、リザードマン達が泣きながら抱き着き合っている。
その中を詐欺師が飛び回ってる。
「アイツは、何やってるんだ?」
「リュリュは皆のケガを治しに回っているである。」
確かにこの三人なら、詐欺師ぐらいしかすぐに治してやれるメンバーは
いないか。そう思い、俺もケガを治して回る事にした。
リザードマン達を治して回った後は、頭を地面に擦り付けながら感謝されたが、
頼むから止めろと何とか起き上がらせ、自分達の棲家に帰らせて、俺達は
六人で話し合った。
「そんな事が……」
「というか、魔鉱石から魔物が産まれるなんて初めて聞いたわ。」
俺とフィルを除く四人は常識外の出来事に呆けながら聞いていた。
事実と受け止めきれていないのか。
「サベルとの決着は付いたけど、変な謎が残っちゃったわね。」
「でも、今すぐにどうこうできる内容でもないわね~。」
とりあえず、その謎については置いておいて、俺達は再びティリアに向かう
事にした。ずっと嫌がらせを受け続けた身としては、落ち着いたのはいいこと
だが、アイツ自体は仲間の元へ行けたのかが少し気になる。
それにもう一人、エーディという敵もいたが、今回は姿も見せていない。
「まだまだ厄介ごとは続きそうだな。」
誰ともなくつぶやいた言葉を、自分自身で反芻して溜息を吐いた。
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