第270話 サベルの最期

「がはっ!げほっ!……はぁ、何で区別が付いたんですか?」

「お前が”何で、あの状態になってる”のか確認したからだ。脳筋はその時の

事を覚えていないはずだからな。記憶にないのなら、あの状態なんていう

言葉すら出てこないだろ?」

サベルが使った魔法の効果は詳しくわからんが、無駄にいろいろ分かり

すぎたのが、仇になったな。

よく分かっていない脳筋とフィルはそのままに、俺は一歩前に踏み出して

ヤツとの距離を詰める。


その途中でサベルが持っていた武器を見てみると、魔鉱石で作られた剣

だったらしい。人のステータスは真似できるが、無機物は見た目や効果を

同じように誤魔化すだけで、実際には別々の物みたいだな。

でなければ、あれだけの硬度を誇る剣が、質量の差があるとはいっても

簡単に折れるとは思わない。


「くっ……!」

焦って飛び上がり、逃げようとするサベルに近付き、一閃のもとに斬り捨て、

上半身と下半身が別々に崩れ落ちる。

イラつくヤツではあったが、過去であろう夢を見た事と、サベルの仲間に

頼まれたからな。苦しまない様に、一瞬で終わらせた。

……はずだった。


「あぁ……痛い、痛い、痛い……エーディ、どこ?エーディ……」

別れたはずの上半身がうわ言のように、一度だけ見たエーディの名前を

呟く。そして傷口から見える肉や血が蠢き出し、形を成していく。

「な、何コレ……?」

「……どうなってるんですか?」

そこには、脈打つ血管や肥大した筋肉が露出し、体の大きさが二倍ほどに

なったサベルの姿が作り出されていた。


「エェェェディィィィィィィィィィィィ!!」

咆哮を上げると、空気が歪んだような感覚に陥る。俺はステータスを確認

したが、予想外の結果が出た。


アンノウン Lv?

HP:?  MP:?  ATK:?  DEF:?

INT:?  MGR:?  DEX:?  LUC:?

スキル


一切、確認できない!?どうなっている!?

動揺した俺に襲い掛かってくるサベル。やってくるのは単純な殴る蹴るの

攻撃だけだが、その一撃一撃がとてつもなく速く、重い。が、

「やり合えない程じゃ……ない!」

攻撃をすべて剣で受け止め、隙を見て腹に蹴りをぶち込む。

「ギャッ!」

悲鳴を上げつつ後ろに吹き飛んだサベルの足が地面に着く前に、後ろから

脳筋とフィルが構えていた武器を振るう。


「はぁっ!」

「せ~のっと!」

二人の攻撃に、ピンボールのように俺のところに戻ってきたサベルに

俺は渾身の力を込めて幾度も斬りつける。


「おおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

防御こそしていたものの、それを上回る速度で走った剣筋は、アイツを

二十ほどに解体し、べちゃりと嫌な音を立てて、再び地面に落ちる。

そのパーツからは黒い煙が出て、消滅していっている。


「エーディ、一人は寂しいよ……傍にいてよ……助けて、エーディ……」

先ほどと同じように呟いていたサベルだったが、時間が経つたびに煙と

なっていき、ついに欠片一つ残らず空へと帰っていった。

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