第269話 本物はどっち?

それからいくつか別々に質問をしていく。


「フルネームは?」

「アリア・ラスティアです。」


「ヴァファールの第1騎士団団長の名前は?」

「ワミ・アールトですね。」


「詐欺師と初めて会った時に食った物は?」

「え、え~と……何でしたっけ……?確か……あ、そうだ!私が熊を倒して調理

したんでした!」


「イオネの港町であった武闘大会で闘った相手はどんな種族だ?」

「ダークエルフの方ですね。強かったので記憶に残ってます。」


どうやら記憶も共有できるらしい。なんて厄介な魔法なんだ……

フィルの方を見ても、今の質問だけで判断が付くはずもなく首を横に振っている。

脳筋も互いをにらみ合い、一歩も動かなくなっている。

その時、

「あれ?指輪が……」

脳筋が付けていた指輪が淡く緑色に光り出した。片方だけ。


「え、何!?」

「どうなってるんですか!?」

「知りませんよ!あなたが付けてるんでしょ!?」

全員が焦る中、俺は【鑑定】を使いその指輪を確認する。


【狂戦士の指輪】

興奮状態が十分以上続くと、10%の確率で【バーサーカー】状態になる。


マズい!そう思って取り上げようとしたが遅かった。

光る指輪をした脳筋は手を引き、後ろに飛び退く。

「うふふ……あはははぁ……ダメですよぉ♪これは勇者殿に貰った、大事な大事な

指輪なんですからぁ……」

「……ねぇ、あれどうしちゃったの?」


【バーサーカー】

三十分間、INT、MGRが極端に下がる代わりに、ATK、DEFを大幅に上げて、

目の前にいる相手を敵味方問わず攻撃します。


ステータスを確認すると、また面倒くさい状態異常にかかっていた。

行商人から買った指輪のせいか?俺はもう一人の脳筋を確認して指輪を

【鑑定】するが、結果は同じだった。


「よそ見はぁ……嫌ですよぉ?」

いつの間にか接近してきた脳筋の剣を受け止める。

「勇者殿ぉ、こんなに愛してるのに他の人を見るなんて、寂しいですぅ……」

そう言いつつ剣を振りかぶり、一合二合と打ち合いを続けるが、やはり

この状態の時はステータスが異常に上がっているため、さすがに

片手間で相手はできない。


「ちょ、ちょっと二人とも!」

「どうして、あの状態になってるんですか!?」

後ろでフィルと脳筋Aが騒ぐが、事情を知らない二人は……


「フィル、隣の脳筋が偽物だ!斬れ!」

「へ!?……あ、でりゃああぁぁぁぁぁ!」

フィルが横薙ぎに斧を振るうが、脳筋Aは剣で受け止める。だがしかし、

脳筋Aの剣が折れ、吹き飛ばされた。


「ぐぅぁ!」

近くの木に叩きつけられた脳筋Aは姿を元に戻していく。それはやはり、

ピエロの姿をしたサベルだった。

その間に、俺は本物の脳筋にフルリカバリーをかけると、少し呻いて

辛そうにしながらも正気に戻った。


「う……あ、はぁ……一体、何が……」

次いで回復魔法をかけてサベルに向き直ると、ちょうどヤツも

起き上がるところだった。

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