第267話 サベルの攻撃

「やっぱり、戦いって数だと思うんですよ。」

それだけ言うと、サベルは大量の魔法陣を出現させ、そこから喚び出したのは、

「ア、アリにムカデ!?」

「コウモリとか、攻撃当てにくいったら、あ~もう!」

虫や体躯が小さい魔物。

直接攻撃が主体の脳筋やフィルには分が悪い。


「先ほど、特殊な攻撃が出来そうな方達は、救出に向かわれましたし、

何よりあの獣人の娘には、も・の・す・ご・く!邪魔されたので、

いない方が個人的に嬉しいんですよね。」

「知った事か。お前が悪いんだろうが。」

だが、確かにあの三人がいなくなると、まとめて攻撃がしにくい。

俺だと助けようとして魔法を発動すると、巻き込みかねん。……いや、相手は

体重の軽い生物ばかりか。それならいけるか?


「風よ。悠久に流れる浄化の調べよ。ゆるしを乞う者すべてを飲み込み、

天へと誘いたまえ……ヒュージトルネード!」

狙いはサベルよりも少し遠く。放ったのは中規模の風魔法で、その威力は

俺達三人にまで届き、吹き飛ばそうとするほど。


「な、何ですか!?アナタ、炎の魔法が得意だったんじゃないですか!?」

「残念ながら、他の魔法も得意でな。」

サベルは、自身が吹き飛ばされそうなのを耐えているらしいが、召喚した

小さな魔物の群れは体重が軽いため、どんどんと巻き込まれていき、竜巻の

餌食になる。


そんなサベル達とは真逆に、俺達は平然と立っていた。

「本当に神鉱石って凄いですね。勇者殿の魔法ですら、威力が軽減される

なんて。」

「シルフ様の攻撃受けても平気なくらいだからね。」

苦労して精霊王達の居場所を回っただけの価値はあるな。


「さて、覚悟は出来てるか?」

風が吹き荒れる中、俺は張り気味に声を上げる。

「そんなもの出来てる訳ないじゃないですか!いいですよ、他にも手は

あるんですから!」

すると、辺りが黒い霧に覆われ始めた。


「何だ……?」

アイツが魔法を唱えた素振りはなかった。だとしたら、最初からここら一帯に

何か仕掛けていたのか?

「勇者殿、どこですか!?」

「何も見えないんだけど!」

一瞬、気が散ってしまったが、こういう時に【見識】を使うべきだった。

すると、おそらく場所的に脳筋が居た付近である箇所に印が二つ示されていた。


「脳筋、そっちにサベルがいってるぞ!気を付けろ」

「分かりました!」

だが、その二つの印はそれから一切動かずに、やがて黒い煙が晴れていった。


「アリア、そっち大丈……夫……?」

「また、めんどくさい事になったな……」

そこにいたのは、互いの姿を見て驚き、焦るように口論する二人。


「な、なんで私の姿になってるんですか!?変身を解いてください!」

「それはこっちのセリフです!偽物はそっちでしょう!?」

俺が最初に考え込んだ隙に、近くまで寄って脳筋の姿を真似たのか……しくじった。

本物も声を掛けるまでに動いてただろうし、正確な位置なんて覚えてない。

ステータスを確認しても、すべて同じ……どうするか?

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