第266話 何がしたいのか?

しばらく走っていくと、見た事のある服装をしたイラつくヤツの姿が

見えてきた。

「おや?よくここが分かりましたね。」

「余裕だな。」

サベルは俺達に見つかったというのに、暇そうに宙に浮いているだけ。

ただし、人質になった子供たちは見つからない。


「人質はどこですか!?」

「そう慌てなくってもいいじゃないですか。ちゃんといますよ、ほらここに。」

そう言って懐から骨――頭蓋骨を取り出し、顎をカタカタと震わせる。


「っ! お仕置きじゃ済まないわよ!」

スターナが生み出した魔法陣に四方を囲まれるサベルだったが、同じように

別の魔法陣がその前に現れる。そして、

「ピギャアアアアアア!」「ギィィィィアアアアァァァァ!」

不快な声を出しながら、いろいろな魔物が溢れ出し、炎や氷、土に風、剣と槍、

トラップを食らっていく。

そのまま、肉の壁という訳だ。


「焦っちゃダメですよ、よぉく見てください。」

サベルの言葉に、頭蓋骨を注意して観察すると、形状が明らかにリザードマンの

物と違う。角まで生えてるそれは、大人と子供の差ではないだろう。

「そうやって怒ってばかりいると、こんな簡単な事に気が付かないんですよ?

お勉強できましたね、パチパチパチ~♪」

「ご忠告、痛み入るわ……」

スターナの息が荒い。

珍しいが、キレているようだ。


「じゃあ、どこにいるんですか!」

「ん~、全員でここに来ちゃっていいんですか?」

「質問の回答になってないよ。」

「親切心で言ってるんですけどねぇ。」

……どういう意味だ?俺達がここに全員でいるとマズい……虚言か?


「ちなみに嘘じゃありませんよ?考えてもみてください、皆さんはなんでここに

来たんですか?」

ここに来た理由……リザードマンが国境付近に集まってると聞いて、

街が襲われたらマズい……?襲わせる?どうやって?

コイツは人質を取っていた。リザードマンは仕方なく、コイツに従っていた。

だとしたら、街を襲わせるには命令すればいいが、近くに人質はいない。

なら、他の方法は……


「街に人質を……?」

「正確にはティリアの方にですけどね~。跳ばしちゃいました、魔石で。」

「スターナ!サーシャと詐欺師を連れていけ!」

俺の言葉を聞く前から魔法を発動していたのか、三人は街の方に跳んでいった。


「あんなに急いじゃって……間に合うといいですね?」

「間に合わせるさ。さて、俺達はお前をどうするかを考えてる最中なんだが。」

俺、脳筋、フィルはもう臨戦態勢に入っている。


「先に聞かせろ。なぜバラした?」

「何がですか?」

「とぼけるなよ。街に子供を跳ばしたことをバラさなければ、惨事は免れない

はずだ。」

「強いて言えば、順調に行き過ぎてもつまらないから?」

「……聞いた俺がバカだった。」

その言葉を皮切りに、サベルもまた戦闘態勢に入った。

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