第265話 久々のサベル

「凄いですね。さすが勇者御一行様です。」

上空には、久々に見たサベルの顔。


「随分と懐かしい登場だな。」

「えぇ、まぁ、暗躍してましたし。」

「あなたがサベルちゃんなのね。……さようなら♪」

スターナが先制して魔法を放つが、当たらない。正確にはすり抜けていく。


「いきなり過ぎません?私が本体だったら危なかったですよ、いやはや。」

どうも魔法か何かで、遠くから姿を映し出しているだけのようで、攻撃しても

意味がない。ここまで殺意をむき出しにしたスターナも珍しい。


そうこうしていると、倒したはずのリザードマンが立ち上がる。

「……操っているのか?」

「とぉ~んでもない。彼らの意思で動いてるだけですよ。」

確かにステータスを確認し直しても操られてはいないらしい。

だが、手加減したとはいえ、簡単に立ち上がれるほどの状態ではないはずだ。


「何をした?」

「特には。そうですねぇ、強いて言えば……」

サベルの姿がぼやけ、他の映像が映る。そこには、甲高い音で鳴く子供

――卵から孵ったばかりであろうリザードマンの子供の姿があった。


その鳴き声に触発されたように、必死で立ち上がったリザードマン達が

襲いかかってくる。

「人質を取ったであるか!?」

「人質だなんて……その通りですよぉ。」

やる事といい、喋り方といい、血が沸騰しそうなくらいにイラついてくる!


スターナとサーシャが状態異常にして足止めしているが、持っている武器で

腕を貫いたり、無理やり立ち上がり筋繊維が切れたのだろうか、おかしな

動きをしながら、戦うのを止めようとしない。

「くそっ!どうすんの、コレ!」

「ちょっと……やりづら過ぎです!」

脳筋とフィルは、先ほどの光景から下手に攻撃するわけにもいかず、なるべく

ケガをさせないようにしているが、数に押されてきている。

詐欺師は……どこ行った?


「おい、詐欺師はどこに行った!?」

俺も攻撃を受け止めつつ、周りを確認するがどこにもいない。【見識】は

乱戦になると判断がつかん!

「もしかしたら、お逃げになられたかもですねぇ。」

サベルの嫌味にイラついていると、森の中から声が聞こえた。


「こっち!みんなこっちに来て!」

そこには俺達を必死で手招いてる詐欺師の姿。今、武器を打ち合っているヤツを

蹴り飛ばし、他のメンバーを見ようとしたが、それより早く足元に魔法陣が

現れた。いつものヒュンッ!という音とともに、全員が詐欺師の元に集まっている。


「助かった、悪いな。」

「いえいえ、どういたしまして~。」

「みんな、こっちに!」

礼もほどほどに、詐欺師が先導してどこかに向かう。


「どこに行くんですか!?」

「そんなの、サベルのところに決まってるじゃない!」

「分かるである!?」

「この前、神殿に戻ってからやたらと勘が冴えるのよね。複雑だけど……」

勘か……他に手掛かりはないし、あまりリザードマン達の相手をしてやる訳にもいかん。

詐欺師を信じる事にして、後を走って付いていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます