第262話 司祭ナデュ

「ようこそ、おいでくださいました。イオネ王国から派遣されている、司祭の

ナデュと申します。」

深々と頭を下げるのは、サーシャより少し大きい、中学生くらいだろうか?

の身長で、羽を生やした少年だった。


「ナデュちゃん、久しぶり~。」

「スターナ様、人前でそういう呼び方はしないで下さいと、あれほど……」

早速、説教が始まった。スターナの方は普通だが、ナデュの方は本当に嫌って

いるんだろうか?


「で、こんな夜中に呼び出したって事は、俺達に話でもあるのか?」

「えっ、あっハイすみません、そうでした。先にそちらの説明をさせて

頂かないといけませんでしたね。」

一つ咳ばらいをして、話をし始めるナデュ。


「実はですね、イオネ王国側に不審な動きがあるという情報が流れてきました。

どうも、リザードマンが国境付近の街に集まっていると。」

リザードマン……アイツらは停戦したばかりで、派手な動きを見せるような

連中じゃないと思っていたがな。

「今のところ、まだ何も被害が出てるわけではないのですが、少し気になりまして。

それで、皆さんに調査していただきたいと。」


話を聞いたスターナの顔は厳しい。

「……なんで、そんな事になっちゃってるのかしら~?」

「先ほど話した情報しか掴めてないので、理由は不明です。ですが、彼らが

街を襲ったりすれば最悪、責任問題にもなりかねません。」

「それは、スターナがティリア宗教都市を襲わせたって騒ぎ出しそうなのが

いるって事か?」

「……」

無言で肯定していた。

確かに各国の中でも権力が強い国に攻め入ったとなれば、そこからさらに問題を

大きくしようと企むのも現れるんだろう。


それからも話をしていたが、とにもかくにも現場に行かなければ判断がつかなそう

なので、向かった方がいいだろうとなった。

「そうと決まれば、行きましょうか勇者ちゃん。」

「……へっ?あの、スターナ様?」

「どうしたのかしら?」

「何でスターナ様が行くんですか?勇者様に行ってもらえばいいだけの話では?」

? 手紙に詳しく書いてなかったのか?


「あぁ、ワタシは今、勇者ちゃん達と旅してるのよ~。」

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

ナデュに脳筋目覚ましに負けず劣らずの大声で叫ばれたため、少し耳が痛くなった。


「え、だ、あ、手紙には勇者様を連れて来たって!?」

「間違ってないでしょ?」

「いやいやいやいや、それとスターナ様が一緒に旅をする理由にはなりませんよ!

っていうか、女王様が旅っておかしいでしょ!?」

もしかしてコイツ……常識人か!?


「だって~、いろいろあったし~。」

「いろいろじゃありませんよ!もっと自分の立場を考えてください!」

あぁ、正常な反論だ……これが普通だよな。もっと早くに会っておくべきだった。

二人の口論を見ながら、俺はそんな事を思っていた。

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