第261話 塔に入るには
あれから四日、歩き続けてたどり着いたのは、目的地としていた塔の前より
少し手前。さすがに警戒は厳重で、離れたところに門が設置されていて、
簡単には中に入れるようにはなっていない。
「中に入れますかね?」
「どうかしら~?聞いてみた方がいいかも~。」
そうして門のところにいる兵士に話を聞いたが、まぁそっけない返答だけしか
なかった。
「例えどのような方でも、許可なく入れる事は出来ません。」だの、
「誰に許可を頂くかは、我々の関与するところではありません。」だのと、
まぁ要するに、入れる気はないとしか言われなかった。
「やっぱりダメね。」
「さすがにそうだろうね。」
「どうするである?許可をくれそうな人が知り合いならいいであるが。」
どうするも何もな。一応、ヴァファール王国に連絡を取ったら、どうにかなる
だろうが、それよりも身近にいるしな。
「スターナ、何とかできるか?国の代表がいるんだろ?」
「う~ん……あの子はワタシの事が苦手みたいでね。あまり会いたがらないから、
簡単に許可してくれなさそうなのよ~。」
仮にも女王と国の代表が仲良くないから、自分のいるところに入らせないなんて
いいのか、そんな事?
と言いたいが、イオネ王国出身なら仕方ないか。
「勇者ちゃん、失礼な事考えてるでしょ。もう、怒っちゃうわよ?」
どうしてこうも筒抜けになるのか。
「ダメ元で、連絡だけ取ってみれば?」
「そうね~。じゃあ、手紙だけ出しておきましょうか~。」
そう言って、スターナは門から反対方向に向かい歩き出す。
先導されて着いたところは、物資の運搬所になっていて、ここで塔の中に送る
物に危険物が無いかの検閲などを行っているという。
また、手紙などをこの場で書いて、内容さえ問題なければ、物資と一緒に
運んでくれるという。
スターナは、その国の代表と言っていたヤツに対して、手紙を書き終えて
中に送ってもらうように提出していた。
「中身には問題ありません。送り先は司祭ナデュ様でよろしいですね?」
「ええ、お願いするわ~。」
女王でも簡単に通してくれないってのは、よっぽどティリア教の権力が強いって
いうのを示しているんだろうな。
「さて、今やれる事はやっちゃったし、どうしようかしら?」
特に他に行く当てもないしな。
「まぁ今日はそこら辺の店回って、宿に泊まればいいんじゃないか?」
ここら辺までくると、泊まるところといったら、要人用の高級な宿しかないし、
ぼったくりのような値段を取られるが仕方ない。街中で野宿するわけにも
いかんしな。
そうして、サーシャの希望で薬屋を回り、飯を食い、その高級な宿に部屋を取り
休んでいるところ、扉がノックされて声を掛けられた。
「夜分遅く、失礼いたします。ナデュ様の遣いで参りました。申し訳
ありませんが、ご同行願えないでしょうか?」
……また、厄介事か。
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