第260話 女神ティリアとは?

「なぁ。この世界でのティリアの立ち位置って、どんな物なんだ?」

「どうしたのよ、急に。」

「なんとなく気になってな。」

俺達はティリア宗教都市を観光がてら、中央にある塔を目指している。

そのティリアを信仰するような場所に来たからか、それとも思い出した事が

気になったからか、誰にともなく尋ねていた。


”信仰を受ければ力は強まるが、百ン十年くらい前にできた新しいもんじゃし、

本人はまだ俗世にいるから、神となれるほどは成長はせんのう。”


あの神との会話でティリアが普通に暮らしていると知っているし、何より

俺をこの世界に呼び出した張本人らしいから、気になるのも当然と言えば

当然なんだろうが。


「ティリア様の立ち位置……それはまぁ、神様ですよね。」

「由来とかは伝わってるのか?」

「有名ですし、知らない人はいないと思いますよ。」

「ヂュガアを除けばだけど。」

うるさいな。知らんもんは知らんのだから、仕方ないだろう。

それから俺が聞いてみると、脳筋はティリアが信仰されるまで――というよりは

勇者の物語についてだったが、語った。




「百数十年前に、この世界に突如として魔王が現れました。

魔王は、いろいろな魔物を使役し、略奪、殺戮、拷問……様々な方法で、人々を

苦しめていたそうです。

そこに現れたのが、勇者様と呼ばれるようになる青年。

青年は旅を続け、仲間を作り、各地の魔物を退治していきますが、無限に

湧き上がる魔物には太刀打ちできず、ついに力尽きそうになったそうです。

ですがその時、女神ティリアが現れて、勇者様に力と魔を払う希望を与え、

魔王はついに打ち倒された……と、そんな感じです。」



……なんか腑に落ちない部分があるような?

「その物語があって、ティリアが信仰される原因となったんだよな?」

「だね。さっきもアリアが言ってた通り、知らない人はいないくらいに有名

だよ。それがどうかした?」

前に話を聞いた時と少し違うような……話?いつ聞いたんだったか?


「あぁ、そうか。」

「どうしたの?」

「前に勉強がてら、勇者の冒険だったか。その本を読んだときに、ティリアの

事が書かれてなかったんだ。」

「……言われると、そうね。」

確か、どっちも知らない人はいないほどの有名な話だったはずだ。


「これだけティリア教……とでも言えばいいのか?が広まってるんだから、

子供向けの本にしたって書かれていても、おかしくはないはずだろ。」

「……ですね。」

「なんで疑問に思わなかったのかしら~?」

この世界の話は時々、ちぐはぐになる事があるのはなんでだ?


「話がこんがらがって、よくわからないである。」

サーシャが、少しだけ難しい顔をしている。

「後から別の話を広めたとかしたのである?」

後から……か。


結局は答えが出ず、その疑問はしばらくモヤモヤしたまま残っていた。

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