第259話 第五の国

日を跨いで、俺達はティリア宗教都市に入国していた。

周りは貫頭衣といったか?宗教などでよく着られている服を纏っている人が

多かった。

「こうも白一色だと目がやられるな。」

「白一色……着てる物ですか?しかたありませんよ、永住している人たちは

普段着みたいなものですから。」

じゃあ逆に白くない服であれば、他から来たヤツだとわかるのか。

さて、入ったはいいものの、どこに行くか?


「この国の王都みたいなのはどこにあるんだ?」

「ここですよ?」

「……ここ?」

聞けば名前の通り、一つの巨大な都市らしく、街以外には中心に存在している

ティリアを崇める総本山となる塔があるだけらしい。


「じゃあ、そこに向かうの?」

「そうね。他に目立つ場所もないし、それでいいんじゃないかしら~。進んで

いって、そのままクアーズ王国に抜けましょうか。確か、勇者ちゃん達って

あの国をあまり旅してないのよね?」

あの時は、サーシャに転移させられたからな。そう思い横を見ると、珍しく

バツの悪そうな顔をしたサーシャがいた。

まぁ、あのタイミングで呼び出されたからこそ、いろいろと助かった面もあるから、

責めるつもりもないんだが。


「最初の目的地って、あの塔ですよね?……随分と遠くに見えるんですけど。」

「そりゃね、歩いて四日ってところかしら?」

無駄に広いな。その間はずっと街だから、特に危険がある訳でもないんだろうが、

いや、街として考えれば広いが、国として考えれば狭いか?でもな……

などと、どうでもいい考えをしながら、俺達は歩き出した。


この街を歩いてると、今までのように活気があるという訳ではなく、ガングルフ

王国の首都のように、みんなして静かだ。

だが、あそことは違い、こちらを嫌悪の眼で見てくるヤツは特にいなかった。

ティリアが博愛を謳うたってるのが原因らしいが、そんな事はどうでもよく

ストレスが溜まらない方が重要で、その点に関してはティリアを褒めてやりたい。


「お店も、少し高級感が溢れてますね。」

「何かワイワイ喋りながら食べるってのが出来なさそうだね。」

無駄に騒がしいよりはいいかもしれないが、こういう雰囲気もあまり得意では

ないからな。飯を食う店選びも苦労しそうだ。

前までは平気だったのに、なんでだ?


「ん~……やっぱり、ここら辺に肉料理はないんだろうね。」

「魚もないのよね。生臭物は置いてないから仕方ないんだけど。」

「じゃあ、ご飯はどうするである?」

「菜食メインだけれど、外れの方に行けば外国の人用の食堂があるから、

そこで食べましょうか~。」

「そうですね。お肉が食べたいですし!」

……そうか、コイツらがいつも賑やかだからか。最近は一人静かに飯を

食う事もなくなったしな。


そこに少し感慨深いものを感じながら、塔を目指して歩いた。

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