第258話 次の国へ

俺達はゲイル達の馬車に乗せてもらい、国境沿いの街である、リデストに到着した。

「やっと着いた~!」

「さすがに長い間乗り続けていると、背骨がガチガチに固まってるのが分かりますね。」

フィルと脳筋は降りて、体をほぐしている。俺も降りると、軽くストレッチをし、

調子を取り戻す。


「長旅、お疲れさま。馬車の移動は慣れないとキツいからね~。」

続いて、バーバラ、クゥ、ゲイルも降りてくる。

「サーカス団に入ったばかりの頃は、本番より馬車の移動が大変だったニャ。」

三人も慣れるまでは苦労したらしい。だというのに、

「く~……く~……」

「んふふ、勇者ちゃんったらダメよ~……」

「お腹減った……ヴィヨル十皿じゃ足りない……」

よくわからん夢を見ながら眠っているのは、凄い事なんだろうか?





「では、我々はここでお別れだ。」

「一緒にティリアに入らないの?」

「そうしたいのは山々だが、次の公演場所が決まっているものでね。」

「その……」

「あぁ、大丈夫だ。場所はヴァファール王国だから、今回のような事は簡単には

起こらないだろう。心配してくれてありがとう。」

そうは言うものの、たかが数日前に命の危険に晒されたばかりだと不安しかない

だろうに。それでも、これが自分達の選んだ道だというゲイル達は、誇らしげにも

見えた。

それから遠ざかっていく馬車を見えなくなるまで、全員で見送った。


「私達も行きましょうか。」

「そうですね。」

俺達は次の国に入るために、リデストの街へと足を向けた。


「人が、あまりいないであるね。」

道行く人は、今までの国境沿いの街とは違って静かで、賑わうというほどの

数もいなかった。

「ティリア宗教都市は、ちょっと特殊だからね。」

確か、女神ティリアを信仰する奴らが集まってるんだったか?


「そんなところに入れるのか?」

「勇者と護衛、女王に元とはいえ巫女がいるんだから、大丈夫じゃない?」

そうやって聞くと、今のメンバーはバラエティ色に富んでいるな。

どうやら、次の国に入るには審査が必要らしく、先に済ませてから宿に向かう

事にした。

街の奥に進むと、今まで以上に頑丈そうな扉がそびえ立ち、入念なチェックが

行われている。


「かなり厳重なんだね。」

「国の重鎮が集まる場所でもあるから、しょうがないわ~。」

どこの世界でも宗教関係が強い権力を持つのは変わらないんだな。

順番を待ち、資料を書かされ、簡単な質疑応答と身分証明書の提出。フィルと

サーシャの分に関しては、俺とスターナ、詐欺師の権限でゴリ押した。

詐欺師が巫女の権利をはく奪されたのが伝わってないのは、好都合だ。


それから宿に向かい一泊して、明日に国を越える事になった。

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