第251話 精霊王との闘い その三

「スターナ、俺をアデントの近くに跳ばしてくれ。」

「でも、すぐに攻撃されるわよ?」

「俺なら問題ない。頼む。」

「わかったわ、気を付けてね?」

そう言い、スターナが転移魔法を使うと、俺の足元に魔法陣ができる。


ヒュン!


《え!?》

転送したと同時に【見識】だけを頼りに、アデントの方に駆ける。

《ぬぅん!》

イフリートが炎を纏いながら、俺に特攻してきたので、剣で斬りつける。

《がはぁ!……だが!》

痛みこそ感じるものの、体力が減らないから死なないっていうのは面倒くさい。

斬られるのを覚悟で構わず攻撃してくる。


「ちぃっ!」

《フリちゃん!》

「こっちだよっ!」

「でぇやああああぁぁぁぁ!」

加勢しようとしたシルフに対し、脳筋とフィルが抑えに入る。全身鎧のフィルが

顔面をガードしながらタックルし、身を低くした脳筋が後ろから迫る。

神鉱石で装備を固めていなかったら、近寄るだけで切り刻まれるところだった。


《ちょこまかと鬱陶しいんだよ!》

ハリネズミの姿だったノームが変身し、10mを越す巨大な牛の姿になり、前足を

高く掲げた。

《ブッ飛べやああああ!》

両前足を地面に叩きつけると、至る所で地面が隆起し、俺達を分断、攻撃

してきた。


「きゃあ!」

「うわっと……とりゃああぁぁぁぁぁ!」

上に投げ出されたフィルが、その勢いのままデカくなったノームを斬りつける。

《痛ぇ!ちくしょう、こんな痛い思いするのいつぶりだよ!?》

言葉から察すると効いているようだが、斬られた箇所を見ると、すぐに修復してる。

やはりHP∞だと倒せないか。


「……ぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!」

《今がチャンス!》

上から叫びながらフィルが落ちてくるのに合わせて、シルフが攻撃しようとする

ので、落下場所に走り出す。


「あああああ――げふっ!」

「大丈夫か?」

「受け止めげほっ!られても痛いもんがはっ!だね……」

なるべく衝撃を与えない様に優しく受け止めたつもりだが、それでもキツかった

みたいで、せき込んでいる。

そこに風が渦巻いてくるのを切り裂きながら、俺は走り続ける。






「何してやがる!さっさと、そいつらを殺せよ!精霊王なんだろうがぁ!」

アデントは次哉達をすぐに仕留めきれない精霊王達に怒りを見せる。

《あ、あの、でも……あの人達、強いから……》

ウンディーネが、恐る恐るといった感じで反論したのが気に食わなかったのか、

八つ当たりを始めた。


「うるさい!お前らは僕の言う事を聞いて、大人しく従ってればいいんだよ!

この指輪の契約に従わなかったら消滅するんだろ、あぁ!?」

《ひっ!》

指輪をウンディーネに向けると、相当怖がっているらしく身をよじっていた。

それに他三人の精霊王も雰囲気が変わるが、次哉を攻撃する手を止めない。

連携が崩れると突破されるのが分かっているからだ。


《うっ……ひっく……》

「まったく、この指輪を作ったヤツは最高だよ。これ《泣かせたね。》……へ?」

ウンディーネとアデント、それを挟んでもう一人のウンディーネ――オンディーヌが

姿を現した。


「ウ、ウンディーネが二人!?どうなってる!」

《ウンディーネちゃんをいじめた……許せない!》

どうやらオンディーヌは相当怒ってるらしく、全身を震わせていた。


「ま、待て!そうだ、契約の指輪!どうだ、お前も従わなければ消滅するんだろ!」

そうしてアデントはオンディーヌを脅すが、

《それね、ウンディーネちゃんとしか契約してないでしょ?……だから私には

効かないよ。》

そうして目の前に巨大な水球を出すオンディーヌ。


《このぉぉぉぉ!クズ野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉ!》


オンディーヌの叫びとともに水球がアデントを襲い、吹き飛ばされた。

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