第248話 抵抗

クズ野郎は俺が一歩近づくと、一歩離れていく。

「どうした?逃げるなよ。それとも……」

五人をゆっくり見渡して問いかける。


「女子供や自分より小さい相手にしか、強気に出れないのか?」

その挑発に少しは癇に障るものがあったのか、俺に手を向けて来て喚く。

「ふざけるな!たかが人間ごときが!」

どうやら喚いた後に風の魔法を放ったらしく体に圧がかかるが、足に力を入れて

踏ん張る。すると地面にヒビが入るが、構わず歩いていく。


「なっ!?おま、お前一体!?」

「ひどい狼狽うろたえ様だな。」

魔法が効かないのを見て取り乱した様子が、随分と滑稽だな。だが、すぐに

気を取り直して、俺とは違う方、つまり……

「動くな!コイツらがどうなってもいいのか!?」

五人の方に手を伸ばす。


「とことんクズだな。」

「はっ、何とでも言え!こういうのは勝てばいいんだよ!」

「じゃあ、ワタシもそれにならおうかしら?」

アデントは俺から視線をずらさなかったから気付きにくかったんだろうが、

スターナがリュリュの、フィルと脳筋がサーシャとゲイル達のところに

転移魔法で移動済みだ。


「はぁ!?――いぎゃ!」

スターナの声に振り向き際、鞭で腕を叩かれて悲鳴を上げる。

「貴方みたいな人には少し痛い目に遭ってもらわないと。どうせ反省なんて

しないでしょうし~。」


腕から血を流し、後じさるアデント。

「ち、畜生!僕は次期国王なんだぞ!その僕に「知った事か。」……わかった。

わかったよ。僕ももう、手加減なんぞしてやらないからなぁ!」

そう言うと、無事な方の手を上にかざす。スターナがもう一度、鞭を

振ろうとするが、ほんの少しだけ相手の方が早かった。


「来い、精霊王!」

その指につけていた指輪が光り、風や火、土、水が渦巻いていき、俺たちの

前に現れたのは精霊王達だった。


《うっわ、強制的に呼び出されるとか、久しぶりなんだけど。》

《で、ここはどこ――げ、何でお前達が!?》

シルフとノームが緊張感の無い声を出す。


「あははははは!これで、お前達に勝ち目なんてない!精霊王よ、コイツらを

皆殺しにしろ!」

《え、あの、でも……》

ウンディーネは相変わらず弱気で、辺りを見回す。


《貴様はまだ、王ではないではないか。それが加護の指輪を使って我らを

呼び出すとは……》

「うるさい!この指輪がある以上は、僕の言う事を聞け!」

どうやら精霊王達もいろいろと困惑しているようだ。俺達も事情が上手く

飲み込めていない。


「どうして、アンタがそれを!?代々、国王にしか使用権限はないはずでしょ!」

「そんなの簡単さ、どうせ僕が次期国王になるんだから先に貰っておいただけだ。

早いか遅いかの差だけだろ?」

詐欺師との会話を聞く限り、あのクズはどうやら盗んできたらしい。


《ぬぅ……いろいろと世話になった者もいるし、それにやはり妖精は巫女で

あったか。あまり、戦いたくなどないが……》

「だったら消えてくれると嬉しいんだがな。」

《すまんが、加護の指輪の契約は絶対だ。これより、貴様達を倒さねばならぬ。》

《う~ん、ごめんね?でも逆らえないのよ。》

《俺はむしろ、仕返しができて嬉しいがね。》

《あの……う~……ごめんなさい。》

そうして、向こうも臨戦態勢に入った。あのクズには、鞭よりもよっぽど酷い目に

遭ってもらう必要があるらしい。

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