第247話 最深部に突入

宿にやってきたのは、見も知らぬ妖精とケンタウロスのバッガだった。

関係はわからないが、バッガの方は酷いケガをしている。

「大丈夫か?今、回復する。」

呪文を唱えると傷が治っていき、とりあえずは一段落といった感じだ。

だが、慌てて俺の肩を掴んで、必死に訴えてくる。


「団長が……みんなが……!」

慌てすぎて要領を得ないので、水を飲ませて落ち着かせる。

「もう喋れるか?」

「あ、あぁ……あ、それどころじゃないんです!みんなが処刑されそうで!」

無口のバッガが言葉を流暢に話す事に少しだけ驚いたが、それよりも気になる

のは内容だ。


「処刑?どういう事だ?」

「ただサーカスを公演しただけなのに、それだけなのに……!言いがかりを

付けられて……」

聞けば、他の三人もろとも牢屋に入れられたと。それに、

「夕方に処刑だと!?」

「そんな……それじゃあゲイルさん達は、もう……」

「ご安心ください、五人はまだ生きています。」

それまで後ろで黙っているだけだった妖精が発した言葉。


「何でそんな事が、それに五人?」

「はい、サーカス団の三人、それにアナタ方と一緒にいた獣人の子と、

リュリュの五人です。」

急にサーシャとリュリュの話が出てきたので問い詰めようとしたが、さらに

言葉を繋げられた。


「ですが危険な状態に変わりありません。」

「それを知ってるのは何でだ?それにお前、リュリュを呼び捨てにしたって事は

顔見知りか何かか?」

「よく知ってます。だって母親ですから。」

リュリュの母親だと名乗った妖精は、深々と頭を下げて俺達に頼み事を

してきた。


「いきなり母親だと言う私を、疑う気持ちは理解しております。その上で、

どうかリュリュ達を助けてあげてはもらえないでしょうか?」

それにバッガが付け加える。

「自分を助けてくれたのも、この人なんです。自分の危険を顧みずに助けて

くれた人だから、信用してもいいかも……しれません。」

最後に尻すぼみになったのは、それが罠だった場合の事を考えてだろうか?

だが、実際に危険が迫ってるとすると、今すぐ向かわないと……


「勇者殿……」

「どうするの、勇者ちゃん?」

「兄ちゃん、早く決めないとマズいんじゃない?」

三人に急かされ、俺の出した結論は……


「場所は知ってるのか?」

「はい。」

「なら、すぐに案内を。」

「ありがとうございます。」

リュリュの母親が礼をした後、すぐに飛んでいき、俺達は後を追う。

やけに静かな神殿の中や地下への階段を通って着いたところは、やたら

デカくて頑丈そうな扉の前。


「この中です。」

【見識】で確認すると、五人以上の数がいたが、まぁ罠だったとしても

全員倒せばいいだけの話だ。


「じゃあ、行くか。」

「その前に、少しだけ。ここに連れてきたことなんですが……」

突入前に止められ、手短に別の頼みごとをされた。





「あなたは、それでいいの?」

「はい、構いません。では彼らを――リュリュを助けてあげてください。」

もう一度、深々と頭を下げるのを見届け、俺は扉に向き直る。


「おおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!」


気合を入れるように叫びながら扉を蹴り破ると、中に突入する。

三人が口々にリュリュを探しているが、何故か俺には遠く離れた場所に

倒れているサーシャとゲイル達、それにボロボロの姿になっているリュリュが

ハッキリと見えた。


「い、一体何なんだよぉ!」

クズ野郎が叫び、三人が一斉にそちらを見て、多少の状況は理解したらしい。

全員が臨戦態勢に入った。

それに俺も……


「よくも、やってくれたな。覚悟はいいか?」


あのクズを殴り倒すだけじゃ、気が済まなそうだ。

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