第241話 リュリュの気持ち

俺とスターナは今、神殿に侵入している。目的は詐欺師に会うためだ。

おそらくまともに行っても追い返されるだけだろうから、スターナの転移魔法を

使わないといろいろ問題になる。今なら全員ぶちのめしそうだし。

「それにしても、知ってたのか?この国の事。」

「やたら排他的っていうのを?それなら昔から知ってるわよ~。」


スターナが子供の頃、王女としてこの国にも訪れたらしいが、その時の眼を

今でも覚えてるらしい。

「すっごいバカにしてたり、嫌ってますっていうのが伝わってくるのよね~。

でも王女だったから頭を下げなきゃいけないのが、気に食わないみたいで……

子供だからって分からないとでも思ってたのかしら~?」

「そういうヤツは、自分がどういう顔をしているか知らないもんだ。」

だから心で蔑んでも相手にはバレないと思ってる。


「でも、私は魔族に囲まれた状態で訪ねたから他の種族、特に獣人が嫌われてた

なんて……サーシャちゃんに辛い思いをさせちゃうわね。」

「すぐに出ていく。問題はない。」

詐欺師がどうするかだけ確認して、街から離れよう。それが侵入している理由だ。


しばらく気を張りながら、探していると廊下を飛んで部屋に入っていく詐欺師を

見つけた。好都合な事に一人らしいので、ドアをノックする。

「はい。どなたでしょうか?」

「入るぞ。」

「へっ?」

俺の声がしたのに驚いたのか、間の抜けた返事をされたが、気にせず部屋に

入っていく。


「え、ちょ!何でアンタとスターナがここにいるのよ!?」

「うるさいな。もう少し静かにできないのか?」

俺たちを見て、ギャーギャー騒ぎ立てるが、その一言にマズいと思ったらしく、

少しは静かになった。


「で、何でいるのよ?」

詐欺師に街を離れようと思ってる事、どうするかを聞くために侵入したと

いうのを説明する。

「あのアデントとかいうヤツ、どうせお前と俺達を会わせる気はなさそうだしな。」

「私も多分、そうだと思うわ。」

性悪なのは理解した上で、付き合いを続けなきゃいけないのか。巫女だか

王妃だかになるのも楽じゃなさそうだ。


「で、どうするんだ?」

「私は……」

それからうつむいて押し黙ってしまった。まぁそうなるか。一度ならず二度までも

脱走したなんてなったら、プライドが高いヤツが何してくるかわからないからな。


「じゃあ、俺達はもう戻る。街を出る前にはもう一度来るかもしれん。」

「……」

元気がないな。丁度いいと言えば、丁度いいか。


「詐欺師。」

「……ん?」

「これをやる。」

俺が取り出したのは旅の行商人が売っていた花、詐欺師が見つめていた物だ。

「な!?へ、あおぅ!?」

尋常じゃないほど取り乱してるが、どうしたんだコイツ?


「前にじっと見てたろ。よっぽど枯れにくいらしいから買っておいたが、

渡すのを忘れてた。やる。」

「あ、あぁそうね、見てたしね私!」

「本当に大丈夫か、お前?」

話も終わったし、渡す物も渡したので、俺達は神殿を後にした。


「それにしても勇者ちゃんったら、ずるいわ~。」

「お前には指輪を買ったろ。」

「そういう問題じゃないのよね~……」

スターナが訳も分からず突っかかってくるがおいといて、宿に戻って一休みするか。

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