第242話 嫌な予感
「勇者殿とスターナさん、いつぐらいに戻ってくるんですかね?」
「結構、遅くなると思うである。」
「……いや、っていうか二人は何で落ち着いてるのさ?」
フィルが二人に問いかけるが、問題でも?と言わんばかりの顔で返される。
「神殿に侵入するって信じられないんだけど。」
「お二人なら大丈夫かなと思いまして。」
アリアの能天気な答えに溜息しか出ないフィル。
「そういう問題じゃないんだけどな……ボク、ちょっとお酒買ってくる……」
「あ、じゃあ私もついでに行きます。今の内にご飯買っておかないと。」
なんとなく、酔いたい気分になったフィルは酒を買いに、アリアは晩飯を
買うために出ていった。
サーシャは街を出歩かないでくれと次哉とスターナに言い含められていたため、
部屋で一人、留守番をするハメになった。
「退屈である……」
特に何もやる事がなくなったサーシャは、一人部屋でぼやいていたが、隣の
部屋から声が聞こえてきた。最初は特に気にもならなかったが、その内容に
耳を傾けざるを得なくなり、聞き終えた後……
「ただいま戻りました。……ってあれ?サーシャちゃん?」
「いないね。トイレとか?」
部屋にサーシャの姿はなかった。
その声が聞こえてきた時は、サーシャ一人しかいなかった。
フィルやアリアが戻ってくるのが、いつになるかわからなかったので、
ついつい飛び出してしまったのだ。
”あ~あ、あのサーカス団も可哀想に。獣人が気に食わないから処刑したかった
だけだぜ、あれ。”
”ま、そうだろうな。確か今日の夕方くらいだっけ?”
自分の気のせいだったら、どんなにいいか。
そう思いながら走るが、この不安は的中するんじゃないかという、予知めいた
確信もあった。だから全速力で走り抜ける。
「はぁ、はぁ……ここであるか。」
しばらく走った後、辿り着いたのは街から離れたところにある、自然の地形を
使った牢屋。その名の通りに罪人を閉じ込める場所だが、どうやらここに彼らが
居るという。
まずは眠り薬を風に乗せて、門番の前に運ぶ。効果は即効性があるので、応援を
呼ぶ暇もなく寝こけてしまう門番。サーシャは中に入っていき、探索する。
複雑な道順を頭に入れながら、巡回をする看守は先ほど同様に眠らせるか
やり過ごしながら奥へ進んでいく。もちろん捕まってる人達も騒がないように
眠らせている。
どれくらい探索しただろうか?奥深くまで潜り込み、自分の勘は外れていたんじゃ
ないかと思って、引き返そうかと思ったその時、
「あれ……もしかして?」
その聞き覚えのある声に振り返ると、やはりいた。
「何で、君がここにいるんだ?早く戻りなさい。」
ゲイル率いるサーカス団が、牢屋に閉じ込められていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます