第239話 アデント・インテビア

「もしかしてリュリュから聞いてなかったのかな?」

「え、えぇ。初耳です……」

「じゃあもしかして、リュリュの家系についても知らないのかな?」

「家系ですか?」

その男が説明をする。


ヴェルグラディア家、それは昔から巫女が産まれる家に付けられる名前。

巫女とは、この世界の神と交信する力を持ち、時に強大な力、時に絶大な権力

などを与えてくれるという。

そして巫女に選ばれた者は、この国の王と結婚しなければならないという。

他にも巫女が産まれる家はあるが、その中でも最も血が薄く、力が弱いと

されてきたため、傍系のさらに末端扱いで一般人とほとんど変わらない生活を

送っていたらしいが、どういう訳か詐欺師が一番力が強いと判明したため、

国王の妻になる事が決定したらしい。


「その、神と交信っていうのは何なんだ?」

「そのままだよ。女神ティリアに祈りを捧げ、その思いと力が強ければ

強いほど、超常の恩恵を受けられるんだ。例えば未来を見る事が出来たり、

体を大きくする事だってね。」

確かに。そんな力があれば富や権力も、ある程度は自分の思う通りに操作できるな。

それにアデントとのサイズ差も問題なくなる。


「だというのに、ずっと前に出て行ったまま戻って来なくてね。みんな

心配してたよ?」

「……申し訳ありません。」

詐欺師の口調がずいぶんと硬い。まぁ、この場で素を出す訳にもいかないんだろう。


「でも、ちゃんと戻って来たんなら問題にはならないから安心して。さぁそろそろ、

ご家族にも挨拶とお詫びをしに行かないとね。」

そう言ってアデントは立ち上がる。


「そういう訳で、僕達はこれで席を外させてもらわなきゃいけないんだ。とても

感謝はしているんだけど、どうにも忙しくて申し訳ない。良ければ、しばらく

滞在しててくれれば、また会う事も出来るから、そうしてくれるとお礼も

しやすいから助かるよ。」

笑顔を作ってこちらを見るが、その後ろにいる詐欺師の顔はあまり嬉しそうでは

ない。それから一言二言交わして、部屋から二人が出て行く。

詐欺師は最後に俺達にお辞儀をしていった。


「リュリュ……ここで別れちゃうであるか……?」

サーシャが少し泣きそうになりながら俺を見上げて、しがみ付いてくる。

「場合によったら、そうなるだろうな。」

「……嫌である。」

消え入りそうな声で呟いたはずだが、静まり返った周りには良く響く声だった。


「……でも、ほら!アデントさん優しそうでしたし、結婚して幸せになるのも

良いと思います。」

「そ、そうだね。しかも王妃様だよ、あのリュリュが!凄い玉の輿だよね!」

脳筋とフィルは結婚だとはしゃいでいるが、スターナとサーシャは反対みたいだ。

俺もだが。アイツは昔、よく感じた雰囲気を纏っていた。

ここは本当にイラつく国だ……






「リュリュ、どうした?元気が無いね。」

「いえ……」

神殿のあまり日が当たらない廊下を、二人は進んでいた。

リュリュの家族は全員が神殿の中に部屋を持っているため、今はそこを

目指している。


「それにしても、早くお風呂に入りたいね。一緒に入る?」

「お戯たわむれを。」

「ちぇっ。いいさ、一人で入るから。まったく、この神殿に魔族や獣人……

しかもハーフが入り込むなんて。あんな出来損ない・・・・・どもは、さっさと

滅びればいいのに。ね?」

アデントがリュリュの目を見て、言い放つ。賛同しろと声なき声で

圧を掛けてくる。


「……はい。」

返事を聞いたアデントは嬉しそうに、向かう先へ足を向ける。

その後ろ姿を、手が白くなるほど握りこんで、悔しそうに見つめるしかできない

妖精がそこにいた。

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