第237話 昔の……

「あったな。」

探していたのは移動方法。馬車よりも早いが、そうそう乗りたいとは

思えないものの、速度に関しては確かに速い乗り物。


「ダラ車運送屋へようこそ。」

商人がよく使っていると聞いて、大きめの町ならあるかもと予想を

付けたが、当たっていた。


「このダラ車は商人じゃなくても使えるのか?」

「ええ。特に問題ありませんよ。」

「なら使わせてもらいたいが、どうすればいい?」

それからダラ車を使う際の説明、支払い、予約などを聞き、出発の日に

合わせて、再度来るとだけ言い残して、店を出た。

すると、店の前に二人の子供がいた。


「いらっしゃいました!」

「こら、出ていくんだから、ありがとうございました。だろ。」

「ありがとござます!」

まだ言葉もおぼつかないような弟と思われる少年の手を引き、兄の方が

訂正する。

おそらく、この店の子供達だろうか?


「ほら、行くぞ。」

「ん!バイバイ!」

兄は頭を下げ、弟の方が俺に手を振りながら店の中に入っていく。


「……」

「ここで何してんの?」

振り返ると、詐欺師が飛んで目の前にいた。

「いや、ただ単にこの町から早く出て行きたそうだったからな。ダラ車を

借りようと町を探してた。」

「そ。」

「脳筋は?」

「先に荷物を持って、宿に向かったわよ。」

確かに数人分の食料を持ったまま町を歩き回るのもなんだしな。

だが、タイミングが良かった。


「詐欺師。」

「ん?」

「いつものお前らしくないな。この町に何かあるのか?」

「……」

気まずい空気が流れるがしょうがない。聞かない訳にもいかないしな。

「アンタには先に教えておいた方がいいかもね。この町というか、この国

なんだけど……」

溜息を一つ吐き出し、諦めたように説明する詐欺師。






「そういう事か……」

「あんまり不快な思いをさせたくなくて黙ってたけど、他のみんなにも

説明した方がいいかしら?」

確かに、あまり長居はしたくない状態だな。この国は王都にだけ寄ってから

さっさと出て行った方が良さそうだ。

サベルとエーディが都合よく、次の国に移動していたらいいんだが。そして

詐欺師と俺は宿に戻り、みんなで食事をした。



その夜、夢を見た。小さい頃の夢。

どうしてだか忘れてしまったが、俺はミサンガを三つ作っていた。

ミサンガとは紐を編み込んで、手首や足首に巻きつけて、自然に切れたら

願い事が叶うという縁起物の一種。


父親に渡した。

「こんな下らん物を作る暇があるなら、もっと努力をしろ。」

そう言って、放り投げられた。


母親に渡した。

特に何も言わず、それをすぐ近くの机の上に置いていた。

それから、どのくらい経った頃だろうか?

ゴミ箱に捨てられているのを見つけた。


兄に渡した。

すると俺に笑いかけて言った。

「お~、これ次哉が作ったのか?ありがと、大切にするよ。」

俺の目の前で誇らしげに腕に着けたのを見て、それが嬉しかった気がする。



「……ギャ、ズギャ。」

体が揺すられた事を感じ取って目を開けると、外はまだ暗い中、サーシャが

こちらを見ていた。

「大丈夫である?」

「何がだ?」

「ズギャ、泣いてるである。」

指摘されて気が付いたが、恥ずかしい事に夢を見て泣いていたらしい。

急いで隠そうとしたが、それより前にサーシャの手が頭に置かれた。


「怖い夢でも見たである?よしよし、いい子、いい子。」

頭を撫でられたのが気恥ずかしすぎて、手を掴んで止めさせる。

今頃になって、何であんな夢を見たんだろう?運送屋の前で会った兄弟と

詐欺師の話のせいだろうか?

だが、もう考える気にもならず目を閉じると、すぐに眠りについた。

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