第234話 日が明けて
「う……朝か。」
昨日の宴会は朝まで続いて……では、ないな。
「今度は何に乾杯しろってんだ?」
「あ~、大体祈っちまったしな。」
「エグダんところの夫婦喧嘩が四日目に突入したってのはどうだ?」
「んじゃ、それでいいわな。とりあえず乾ぱ~い!」
今も続いてた。ドワーフという種族は本当に底なしだと実感した。
「やっと起きたかのぉ。」
「バルドか……」
「酒の匂いだけで酔うとか、情けない。もう少し強くならにゃあいかんぞ?」
「お前等基準で話をするな……」
見ると、サーシャとフィル以外の全員が俺と同じようにグロッキー状態だった。
町中の酒という酒が集まって、絶えず匂いの近くにいれば、こうなるのも
当たり前だろ。
というか、できれば寝てる間に酒は遠ざけておいて欲しかった……
「うぇ……ぎぼぢ悪……」
「水をください……」
「ふぅ、はぁ……なんか胃の奥がキューッとしてくるわ~……」
「大丈夫である?はい、コレ。」
他の三人も起きた頃にサーシャもやってきて、酔い止めの薬をくれた。
眠そうだったというのもあるが、先に避難させといて正解だった。
「みんな大丈夫?ボクもこれあげるよ。」
渡されたのは、透明で匂いが強い
「……これは?」
「やっぱり二日酔いには迎え酒だよね!」
「むみゅ、ふみゃ、にゅあにゅしゅりゅの!?」
フィルの頬を両の手の平で押しつぶすようにして、上下左右前後に
ぐちゃぐちゃにしてやった。何となく、そうしたかった。
「何アレ、優しくない?」
「まぁ、勇者殿がフィルさんに手荒な真似しないと思いますし。」
「最初でコップに閉じこめられた私の立場は?」
「ワタシ、まだ弄ってもらってないわ~……」
「我が輩もである。」
うるさいな、外野。
「やっと終わった……ほっぺがダルダルになってる気がする……」
《安心しろ。普通と変わらん。》
「まだいたのか。」
用事が終わったら、さっさ消えたと思っていた。
《礼が言いたくてな。ついでにシルフちゃんとのウキウキデートについて、
どれだけ楽しかったか教えてやろう!》
「断る。」
何が礼が言いたくてだ。どう考えたって、後半に言ってた方が本命だろ。
「でも、ちょっと興味あるような……」
脳筋が乗り気だ。正気か?
それから話をされたのだが、溶岩の海を泳いで遊んだだの、筋肉無いくせに
筋肉の素晴らしさについて語っただのと、どうでもいいようなことばかりを
長々と……というか、
「そんなんでシルフは喜ばんだろ。」
《何を抜かす!ただひたすらに微笑んでくれてたぞ!》
「……会話は?」
《デートで恥ずかしかったのか、ほとんど喋らんかったわ。シルフちゃんは
照れ屋だからな!》
あのノリが軽いシルフが喋らなかった!?相当キツかったんだな……
「可哀想に……」
「罪悪感が……」
「……今度、みんなで励ましに行きましょうか~。」
「そうであるね。」
「ボクでも、さすがに無理かなぁ……」
今度あったら、とりあえずは謝る事を心に決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます