第233話 完成した品は

その日は神鉱石の加工をすべて終えた記念と称して、町中で宴会が行われた。

多分、飲みたいだけというのもあるだろうが、骨を折ってくれた面々に

対して野暮な事は言いっこなしだ。


「やはり、仕事の後の一杯は美味いのぉ!」

一番の功労者、フィルの父親であるバンデが酒を呷る。

ドワーフであるのを知らしめるように、その量は尋常ではなかった。

何せ、二リットルのペットボトル数本分は入るだろうと思われる、ジョッキと

すら言っていいものか迷うような物で、酒樽からじかに酒を掬い上げて

喉に流し込んでいく。


「親父、酒は控えるんじゃなかったの?」

「あれだけの作業量をこなしてしまったら、体は火照ったままじゃし、喉が

どうしても渇いてのぉ。冷えた酒で潤さんと死んじまうわい。」

ドゥーダは、無駄に火が付いたとぼやいて、酒を止めるのは諦めてるようだ。


「今回の事、感謝する。」

「お客人、あれは我らドワーフが精魂込めて作った物じゃ。出来るなら

愛着を持って使ってもらえると職人冥利に尽きるでの。」

「あぁ。」

「それにしても、あの注文通りで良かったのかのぉ?」

今回、俺が作ってもらうように頼んだのはいくつかある。


まずは剣を二振り、これは俺と脳筋の分だ。

一般的な長さより少し長めではあるが、神鉱石の特徴なのか、重さはそこまで

感じず、手にやたらと馴染んでくれた。

表面は薄く青みがかってて、どんなものでも刃先が触れただけで斬れていった。

そのため、剣を収める鞘の内側にも神鉱石を使って、鞘の損傷を防いでいる。


次にナイフを二振り、詐欺師とサーシャ用になる。

あまり直接攻撃をしない二人だが、だからこそ念のために護身用として

持たせておく。

詐欺師のナイフはとても小さく、サーシャは手の形が蹄状で持ちやすくする

ように大分苦労したらしく、この二人の武器は大きさほど作業が楽では

なかったそうだ。


そして、スターナには鞭。

しっかりと編み込まれた革製の鞭に穴が開いた神鉱石の欠片をいくつも通して、

切り裂くのを主目的に作ってもらった。

欠片を編み込むと、革がちぎれてしまうので自然とそういう形にしたと言われた。

通常は、内側に神鉱石の欠片をまぶした皮袋に入れて持ち歩くようになっている。


防具は俺は篭手と脛あて、それに靴の裏側に埋め込んでもらい、脳筋は鎧を

似たような形状で作ってもらった。

詐欺師、サーシャ、スターナの三人はブーツや靴の底に入れたり、着る物の裏側に

邪魔にならない程度に編み込んで、多少の防御力UPを兼ねている。

下手に欲をかいて、動きづらくなる方が心配になるからだ。


そして、余っている神鉱石は……

「はぁぁ~……ボクの斧かっこいい~……♪鎧も綺麗になっちゃって……」

フィルの武器と防具に使った。

なにせ全身鎧と斧なので、一番材料を使うためにドゥーダとバンデから何回も

確認されたのだ。自分の身内に、ここまで素材をつぎ込んでもいいのかと。


別にそれ自体は構わないのだが、さっきから数時間頬ずりや抱き着きを

繰り返しているのを見ると、先に教えておくべきだったかと思う。

メンバーには作ってもらう物を教えてなかったため、大騒動だ。


「はふぅ……美しいです。しかも、剣は勇者殿とお揃い……ふふふふ♪」

脳筋はうっとりと眺めているし、

「お~!これは斬れるである?……おお~!」

「靴の裏に入れても歩きやすいなんて、本当に珍しいわね。」

サーシャは試し切りをして、詐欺師はさっきからずっと歩き回っている。


スターナは魔法で剣や槍を出して、それを鞭で打って感触を確かめている。

「あ、ダメこれ、癖になっちゃいそう。」

……最後のセリフは聞かなかった事にしよう。

とりあえず、思ったよりも喜んでくれたようで何よりだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます