第231話 神鉱石を叩こう

「おお、戻って来たか!」

俺達がピッガの町に戻って来た時は、町中が上に下にの大騒ぎだった。

その原因はやはり、あれだろうか?

遠くに見えるフィルの兄がいる工房から、火柱が上がっているのと、

熱気が伝わってくる。


「イフリート様ですかね。」

「多分、そうだろうな。」

「暑くて近寄りたくはないけど、行きましょうか。」

詐欺師の言葉に、全員で工房に向かう事にした。


「うおりゃあああぁぁぁぁ!」

《ぬうぅぅぅん!》

工房の中にはドワーフが一人、デカいハンマーを持って神鉱石を

叩きまくっている。そして外にはドワーフの人山ができている。

辺りには金属が甲高く鳴る音が響いているが、しばらくするとそのドワーフが

倒れてしまった。


《だらしがない!》

「エンリケがまた倒れたぞぉぉぉ!」

「運び出せ!」

「誰か水持ってきてやれ!」

一人のドワーフが中に入り込み、エンリケと呼ばれた男を担ぎ上げて、外に

運びだす。その途中で俺と目が合った。


「ん?……勇者さんじゃないっすか!」

それはフィルの兄――ドゥーダだった。




一旦、あの場を離れて話し合いをする事になったので、町の食堂にやってきた。

「いや、まさか本当にイフリート様が来てくれるとは思いませんでした。」

「約束させたしな。で、あの騒ぎはなんだったんだ?」

「いや、実は……」


ドゥーダの説明はこうだった。

数日前に町の入り口にイフリートの姿が現れたので大騒ぎになった。

理由を尋ねたら俺達との約束を果たすために、体力を大量に消費しながらも

姿を見せたとの事。

神鉱石の件についても事情を知っていたので、早速作業に取り掛かったが、

思った以上に硬く、加工しづらかったので、長時間イフリートの出す高温の

炎に耐えながら神鉱石を加工しなければならなかったらしい。


結果、一人二人ではすぐにダウンしてしまうらしく、店の手伝いをする必要の

あるドワーフ以外が総出で手を貸して、叩いて倒れては交代し、叩いて倒れては

交代しを繰り返しているとの事だった。


「……すまん。」

「なんで謝ってるんすか?むしろ、あんな素材に出会えるなんて一生かかっても

ないし、ましてや自分が関われるなんて光栄なんすよ。勇者さんが申し訳なく

感じる必要なんてないっすよ。」

どうしても合作になっちまうのは残念ですがねと付け加えて、ドゥーダは

ドワーフらしい豪快な笑い声を上げる。


「兄貴、後どれだけかかりそう?」

「そうだな……注文リストから見て、もうちょいってところかな。しかし本当に

良いんですか?」

「ん?」

「あの注文って……」

「あぁ、構わん。礼替わりにもなるしな。」

この町を出る前に、俺がドゥーダに作って欲しい物をリスト化して渡して

おいたが、多分あの品の事だろうな。


「アンタ、何か変なの頼んだの?」

「変なのってなんだ。」

詐欺師が余計な口を挟んでくる。

しばらくはそうやって休んでいたが、そろそろ工房に戻るかという流れになり、

あの熱気冷めやらぬ場所に行くと、ちょうどフィルとドゥーダの父親が打つ番に

なっていたらしい。

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