第227話 ウンディーネとオンディーヌ

《オンディーヌちゃん……オン……う、うぇぇぇぇぇぇん!》

泣き出した。どうするべきか?

俺が悩んでいると、森の奥がガサガサと鳴りだして、青い物が飛び出してきた。


《ウンディーネちゃんをいじめるのは誰!?》

……もう一人のウンディーネ?

どうしていいかわからないんだが……詐欺師の方を見ても、目と口を見開いて

驚いている。


《アンタ達がいじめたの!?》

「いや、そういう訳じゃないんだが。」

《オンディーヌちゃぁん!うぇっ、ひっぐ!》

いい加減に泣き止んでくれないだろうか?凄い量の涙で泉の水位が、どんどん

上昇してきているんだが。


「俺達はただ、ウンディーネに用事があって来ただけだ。……が、その前に

なんで二人いるんだ?」

俺の質問に一人が泣き止んで、もう一人がマズいとでも言いたげな顔をして

別の方向を見てる。

何か隠してるのか?


「それにウンディーネと……オンディーヌ?別の精霊王か?」

「いや、私もそんな話は聞いたことないわよ。」

二人を見てみると、コソコソしている。


《ど、どうしよ~!バレちゃったよ~!》

《まだ大丈夫よ、落ち着いて!ね?》

小声で話してるつもりらしいが、精霊王特有の辺りに響く声のせいで

やたら聞こえてくる。


「バレたって事は、精霊王が二人なのを隠してたのか?」

《ひゃい!?ちょ、何で!?》

《ち、違うの!これには深い訳が!》

「じゃあ話してもらおうか?」

《んぅ!》

二人は視線を合わせていたが、オンディーヌと呼ばれた方が口を開いた。


《教えてあげるけど、絶対他言無用だからね!》

「よっぽど変な内容でもなければ、言いふらすつもりはないから安心しろ。」

それから昔話が始まった。


精霊王も種族の頂点に立つ者、というだけでパッと産まれる訳ではない。

死んでしまう少し前に、自分の力や能力の一部を分身体として

作り出したものに分け与え、それが一人前になるのを見届けてからこの世を去る

という。

だが、以前の精霊王がミスをしていたらしく、一つの体に二つ分の人格が

形成されたそうだ。それがウンディーネとオンディーヌ。

産まれてしばらくは問題なく過ごしていたが、時間が経つにつれて変な違和感を

覚え、死ぬ間際に行うはずの分身体を作ってみたら、思ったより上手くいって

二人に増えたのだという。


「で、それが問題あるのか?」

「問題大アリよ!」

俺の質問に、何故か詐欺師が叫んだ。


「どうした?」

「だって、そうしたら次の精霊王が産まれなくなるかもしれないじゃない!」

「そうなのである?」

《い、いや、それはその……どうだろうね?》

「どうだろうね?じゃないわよ!」

珍しく詐欺師が精霊王に怒鳴った。


「まぁ落ち着け。実際に産まれなくなるのか?」

《他に同じ状況に陥った人がいないから、わかんないの。》

「でも、その分身体?を作るのは上手くいったである。だったら、もう一度

やってみても上手くいくかもである。」

「精霊王が分身体を作るのは、相当の負担がかかるって聞いてるのよ。だから

死ぬ間際にしかやらないって……」

《でも多分できそうな気がする……よ?》

「はぇ?」

ウンディーネの言葉に間抜けな声を出す詐欺師。


《な、何となくだけど上手くいく気がするの。》

「う、嘘でしょ……?私達の常識が……」

よく分からないが、詐欺師ががっくりと項垂うなだれた。

問題ないならいいんじゃないのか?

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