第226話 水の精霊王
「おい、起きろ。」
《うふぇ……?まだ眠い~……》
「全然、起きないわね……」
さっきからウンディーネを揺すっているのだが、動かない。一応、反応は
帰ってくるものの、休みたいだの起きたくないだのと言うだけだ。
この状況で、誰に話しかけられてるかどうかすら分かってなさそうな気さえ
するのが不安だ。
「どうするである?」
「どうするも何も、ウンディーネと交渉しないとノームに必要な物が
手に入らないしな……」
いい手はないかと考えるものの、特に何も思い浮かばない。
「じゃあさ、先に進む?」
詐欺師の言葉に考えるのを中断する。
「どういう意味だ?」
「いや、ウンディーネ様がいた泉に行ってみて、どうしてこんなところで
寝転がってるのか、原因が分かるかもって。」
なるほどな。
「今のところ、コイツが相手をしない以上は他に方法もないし、行ってみるか。」
「である。」
ウンディーネを放っておいて、さらに先に進んでみる。
さっき三人と別れてからウンディーネに会うまでと同じ時間をかけて、目の前に
泉が現れた。
「綺麗である。」
その水は不思議と光っていて、森の中の薄暗さを照らし出し、幻想的な雰囲気を
作り出していた。
「ノームは不純物のない水が欲しいとか言ってたか?」
「そうね。」
「この泉の水じゃダメなのか?」
見る限り、水は透き通っていて、少し深めの底にある小石の姿すらハッキリと
見えるくらいに澄んでいる。
「ん~……確かに良さそうなものだけど……でも、私達じゃさすがに
判断できないわね。下手な物を持って行くよりは、やっぱりウンディーネ様に
ちゃんと貰った方がいいと思うわ。」
それもそうだな。
俺と詐欺師が喋っていると、サーシャが泉の近くに寄って水を覗き込んでいた。
「どうしたの、サーシャ?」
「【水精霊の涙】を入れてみたである。」
別れる前に、フィルから数個ほど受け取っていたらしい。
「一応、姿は現してたわけだし、何も起きないんじゃないかしら?」
「そうであるか……あれ?」
サーシャが泉を見て不思議そうにしていたので、俺と詐欺師も覗き込んでみたら、
水が泡立っていた。
「どうなってるんだ?」
「さぁ?」
全員が訳が分からず、そのままの状態で固まっていると、大きな水の球が
浮かび上がってきた。
「……敵か?」
俺は剣を抜き放って、構えておく。サーシャも戦闘態勢に入ったが、詐欺師だけ
おかしな顔をしていた。
「あれ?これってウンディーネ様が現れる時の……」
言い終わる前に球が軽く弾け飛び、女の姿をした精霊王――ウンディーネが
現れた。
「……さっき見たヤツと一緒か?」
「え、いや、ん?」
とりあえず害はなさそうなので戦闘態勢を解くと、向こうが喋りだした。
《なんで、ここに人が来てるの!?嘘でしょ、やだ~!オンディーヌちゃん、
どこ~?》
喋ったというか叫んだ。どういう事だ?
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