第224話 ウンディーネのいる森へ

「おはようさん。」

「おはよう。」

翌日、俺達は朝食の場でゲイル達のサーカス団と一緒になった。


「昨日は楽しんでくれたかい?」

「あぁ。」

「それなら良かったニャ。つまらなかったなんて言われたら、ショックで

死んじゃうニャ。」

「あたいも朝飯を喉に詰まらせて死んじまうかもしれないねぇ。」

それはないだろ。


「君達はこれから、どこに行くんだったか?」

「えっと……ここからだと西の方に行ったところだね。」

「そうか。済まないが、そこまでは行かないから乗せて行ってあげられそうに

ないんだ。」

そう言ってゲイルは伏せ……頭を下げてくる。


「そんな頭を下げて頂かなくても!私達はここまで送って頂いただけで

十分ですから!」

「本当に申し訳ない。次の予定が無ければ、多少の寄り道も許容できるんだが。」

「もう次が決まってるのか?」

「あぁ。王都で公演があってね。」

思ったよりも、このサーカス団は人気があるらしいな。

そのまま会話を続けながら食事を続けていたが、詐欺師の様子がおかしい。

いつもなら誰よりも食い意地が張ってて、かき込むように飯を食べているくせに、

今は手が動いていない。


「どうかしたのか?」

「……」

「おい。」

「へ?……あ、何でもないわよ。」

俺に指摘されたのが気まずかったのか、いつもの調子以上に腹に詰め込もうとする。

が、

「げほぁっ!」

「きゃっ!リュリュちゃん、大丈夫!?」

「み……水……」

コイツは何やってるんだか。


朝飯を食い終わった後は、少しだけ食休みを取って町の外へ。

「それじゃ、あたい達は南側から迂回するから。」

「ばいばいニャ。」

「君達に女神ティリアのご加護がありますように。」

「……じゃ。」

バッガの無口ぶりが酷くなってる気がする。サーカス中もほとんど喋ってなかったし、

大丈夫なんだろうか?

別れの挨拶を済ませた後は、前と同じくあっという間にいなくなった。


「我が輩たちも行くである?」

「そうだね。んじゃ西へと行きますか。」

そうして俺達六人は歩き出した。





「んで、ここがその森だよ。」

あれから三日、特に何もなく旅を続けて、ウンディーネが現れる森へとやって来た。

「光の森ほどじゃないけど、ここも広そうね。」

「それなら大丈夫、道は一本しかないし。」

それなら安心か。

今まで精霊王と会う時は、微妙な場所ばかり歩かされて面倒くさかったから、

一回くらいは普通に会う事が出来ても罰は当たらんだろ。


だが、結構な距離を歩いたはずなのに、泉は一向に見えない。

「ちょっと、どうなってんのよ?」

「あっれ~?おかしいな、一本道を進めばあるはずなんだけど。」

また厄介ごとに巻き込まれた始めた予感するが、気のせいであって欲しい。

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