第223話 サーカス開催
村に泊まった翌朝から、祭りはもう始まっていた。
小規模の祭りだったため、派手な物はなかったが、屋台が立ち並んで
向こうでの射的の代わりか知らないが、弓で的を落としたら景品を貰える
ような店まであった。
「近所の神社でやってたような祭りみたいだな。」
「何の事ですか?」
「いや、こちらの話だ」
誰に言っても理解はされないだろうから、心に留めておくだけにした。
朝飯を屋台で済ませ、少し時間が経つと、
「みんな集まるニャ!サーカスが始まるニャよ!」
ワーキャットのクゥが宣伝を始めた。
「我が輩たちも行くである。」
「そうね~。じゃあ頑張ってる姿を見に行きましょ~。」
サーカスは村の少し奥にある広場で特製ステージを作り、開催された。
「え~、皆様お集り頂きありがとうございますニャ。当サーカス団の
華麗ニャる演技、とくとご覧あれ!」
クゥの口上が終わると拍手が聞こえてくる。それを待っていたかのように
ラミアのバーバラが手を振りながら、デカい何かを抱えてステージに出てきた。
「さぁ見とくれ!ここに取り出したるは、アウア鳥の卵!」
卵かアレ。デカくて分からなかった。
「今から、これを丸呑みにするよ!」
言い終わると、バーバラは口を大きく……裂けるんじゃないと思うくらいに
横にも縦にも開き、自分の体長の半分ほどある卵に吸い付く。
そうすると段々と卵が消えていき、代わりにバーバラの体が丸く膨らんでいく。
時間にして8秒くらいだろうか。卵は完全に腹の中に移動してしまった。
「どんなもんさ!」
またしても拍手が起こったが、疑問が一つ。確かにインパクトは凄いんだが、
あれはただの食事風景じゃないか?
だが、口出してシラけるのもなんだし、黙っておこう。
次はクゥがステージに上がって、客に向かい声を掛ける。
「え~、では誰か手伝ってほしいニャ。」
その声に数人が手を上げたので、一人を選んで一緒にステージに上げた。
「じゃあ、これを持って横に手を伸ばして欲しいニャ。」
言う通りに手を横に伸ばしたままリンゴを手の上に持たせ、さらに頭の上にも
載せて、10mくらい離れるクゥ。
これは定番のアレか?
「さてさて、取り出したりますは、このニャイフ!」
この時点で多分間違いないな。
「見事、あのリンゴに当てましたら拍手喝采よろしくニャ!」
クゥは九本のナイフを手に集中し、タイミングよく投げ放つ。
まず三本はそれぞれに命中、次の三本は手と頭から離れたリンゴに刺さった状態の
ナイフの柄に命中。最後の三本は客の両側と股の間から、落ちきる前のリンゴに
向かって飛んで命中。
クゥが手を振ると、客も拍手で答える。中々の腕前だ。
それからもゲイルの火の輪くぐり、ケンタウロスのバッガがジャグリング、
全員が他の芸も披露していき、サーカスは成功で幕を閉じた。
「面白かったですね!」
「みんな上手だったである。」
「さすが巡業で回ってるプロだね。」
脳筋達も喜んでいる。
サーカスは夜の部もあるらしいので、俺達は休憩を取ったり食事を挟んだりして
その日をゆっくり過ごす事にした。
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