第222話 村の収穫祭
俺達はまたサーカス団の引く馬車に世話になっていた。
「どうして、こんなところに?」
「ここの街道から離れたところに小さな村があってね。そこで芸を見せる予定
なんだよ。」
「それは都合がいい。もし良ければ連れて行ってほしいんだが。」
「別に構わないが、君達にも目的の場所があるんじゃないのか?」
「いろいろと補充をな。」
そんなこんなで二度目の厄介を掛ける事になってしまったが、一緒に
その町とやらに連れて行ってもらう事になった。
出会ってから、さらに二日目の夕方。グワンドという村に辿り着いた。
「ここか。」
「そうニャ。ちょうどお祭りをやる時期にウチのサーカス団が呼ばれるニャ。」
紹介された村の広場では飾りつけや屋台の準備が進められ、土と水の収穫祭との
文字が書かれた看板が掲げられていた。
「収穫祭は分かりますが……土と水の?」
「そうニャ。ウンディーネ様とノーム様が姿を現す事の出来る場所に挟まれた
この地だから、精霊王様に一年の豊穣を報告する意味でお祭りが開かれるニャ。」
「なるほど。」
村自体は小さく、大規模な祭りではないみたいだが、活気に満ちている。
「祭りは明日の夜やるんだけど、アンタらも良かったら見て行かないか?」
「急ぐ訳でもないから、いいんじゃないかしら~?」
「ボクも、どんな芸をするのか見てみたいな。」
スターナとフィルが先だって賛成する。
俺を含めた四人も、このサーカス団なら安全そうだと思っていたので、特に
異論は挟まなかった。
「んじゃ決まりだね。こうなりゃ、あたい達も気を抜けないね。」
「だったら今から、村の外で練習でもしてくるかニャ?」
「それは良いアイディアだ。日々の積み重ねが腕を鈍らせないための唯一の
方法だからな。」
そう言っていたので、俺達はサーカス団の四人と別れた。
一泊する事になったので宿を取り、部屋でくつろぐ。
「明日は楽しみであるね。」
「あぁ、そうだな。」
「ゲイルさん達、どんな芸をするんでしょうね?」
ゲイルとは団長の名前だ。性格と声だけではなく、名前も中々に渋い。
「あまり想像がつかないわね~。」
「ボク、サーカスなんて見るの何年ぶりだろ?」
「そうなの?ピッガの町にはサーカス団とか来なかったんだ?」
……多いな。
「そろそろお前達も、自分の部屋に戻ったらどうだ?」
部屋は二つ取っているはずなのに、何故か一つの部屋に集まってるため、
狭苦しくなっている。
「まぁまぁ、いいじゃん。細かい事は言いっこなしだって。」
「そうよ、寝るまでの喋り相手になったげてるんだから、感謝してほしい
くらいだわ。」
図々しいな。
こうして仕方なく夜まで喋っていたが、晩飯を食べて、三人の髪を梳き終わり
眠りについた。
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