第220話 ノームとの交渉?

穴から出てきたハリネズミは、やたらと騒いでいた。

何でも、人がいないからって、穴の中に水を流し続けるなんぞ常識が無いのか?

と、言われた。

「まったく、もうちょっと考えてから行動しやがれ!」

……何故、ハリネズミに怒られてるんだろうか?


訳の分からない状態でボーっとしていたら、フィルから驚きの言葉が放たれた。

「す、すみませんノーム様……」

……何だと?


「フィル、これがノームなのか?」

「うん、そうだよ。」

今までの精霊王のように、自分の属性で体を構成してる訳でも、辺りに響くような

喋り方もしていなかったので、何というか想像してなかった。


「誰がこれだよ、誰が。年上の人に対する言葉遣いってのを、教わらなかったのか、

あぁ?」

やたらと凄んでくるが、ハリネズミの姿のなので愛嬌があるとしか言いようがない。

それにしても、詐欺師は俺に何をやらせたかったのか?そう思っていたら、

詐欺師が喋り始めた。


「そりゃ、飲んでた酒に水が入ってきたら嫌になるわよね。」

「そうそう!せっかく上物の酒を楽しんでいたってのによぉ!」

「私達が呼んでも無視して飲み続けるくらいだし。」

「当たり前よ、ったく……いちいち呼び出しなんぞに答えてたらキリがねぇんだから

適当でいいんだよ。」

「その姿も酒が飲めるように、わざわざ肉体を作り出してるんだもんね。」

「やっぱ酒の為にゃあ、ちょっとした苦労も……あん?」

何かがおかしいと思ったのか、会話を一旦区切ったハリネズミはこちらを見てきた。


「ほう。人が待ってたのを無視してたのか。」

「いけない子ですね。」

「お仕置きである。」

「あらまぁ~……うふふふ。」

「うわっ、怖いよ兄ちゃん達……」

最後に詐欺師が宣言した。

「よし、やっちゃいなさい!」


俺がゆっくり手を伸ばすと、小刻みに体を震わせた。

「ちょ、いや、悪かったって!ほら、酒ならまだあるから皆で飲もうぜ!?

その、暴力とかよくないと思うな!ね、頼むからさ!……あ、


ああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


多分、その日は精霊王にとってトラウマになっただろう。





「すいませんでした。何でも言う事聞くんで勘弁してください。」

土下座のようなポーズで頭を下げるハリネズミ。

「それなら話が早い。お前が最近作り出した宝石っていうのをくれ。」

「え、無理。」

即答で断られたので、尻尾を掴んで持ち上げると、ジタバタと暴れる。


「いや、やりたくないとかそんなんじゃないから下ろして!」

「じゃあ、どういう理由だ?」

「水が!綺麗な水が無いんだよ!」

「水?」

どうも宝石を生成する際に、不純物のない真水を使用するらしいが、今は

手元にようで、作れないとの事だった。


「どうすれば手に入る?」

「綺麗な水つったら、やっぱウンディーネに貰うしかねぇわな。

……お~痛てぇ。」

何となく予想はしていたが、またか。こうして俺達は、最後の精霊王に

会いに行くハメになった。

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