第219話 岩山の中心部へ

俺達は森から旅を続け、岩山に辿り着いた。

「ここだよ。」

「周りは何もないであるね。」

岩山というだけあって、本当に岩石しか転がってない。

というか、温泉が近いイフリートとか、屋台や観光をさせているシルフのが

おかしいんだろうな。

……今度こそ、まともだといいんだが。


「それで、目的地は岩山の中心でしたっけ?」

「そう。底の見えない大穴で通称、地獄の底。」

本当に大丈夫なんだろうか?どれだけ心配しても足りなさすぎる気がしてきた。


「とりあえず歩きましょうか~。」

「そうね。」

その岩山は特に誰がいる事もなく、何かある訳でもなく、平凡過ぎた。


「飽きるな。」

「気持ちはわかるけどね。登山好きの人でも、あんまりっていう場所だし。」

道ももう少し整備されていればいいが、ゴツゴツした感触が足元から返ってくる

くらいには、石や岩で溢れている。


「勇者ちゃん。」

「どうした?」

スターナが喋りかけてきたので答えると、

「ワタシの魔法で行った方が早いかしら~?」

と提案された。確かに今までとは違って、躊躇ちゅうちょする必要もないか。

そう思った俺は、スターナに許可を出して、岩山の中心に移動する事にした。


「じゃあ、行くわよ~。」

ヒュン!というお決まりの音とともに転移を繰り返す俺達。

多少の繰り返しの後に、地獄の底と呼ばれる大穴に辿り着く。

「やっぱりスターナの転移魔法は凄いね。」

「お褒めにあずかり光栄だわ~。」

フィルは袋をゴソゴソと漁りだして【土精霊の微笑】を取り出す。


「んじゃ、投げるよ~。ほいっと。」

投げ入れられたソレは、地獄の底にどんどんと吸い込まれていき、その内に

見えなくなった。

「で、後は待つだけだね。」

その言葉に従って、ノームの登場を、各自くつろいで待っていた。




十五分経過

「遅いですね。」

「そんなに時間が経ってるわけじゃないしね。気楽に待ちましょ。」



三十分経過

「まだ来ないである。」

「もうちょっと待ってみましょうか~。」



一時間経過

「おい……」

「……そういう時もあるんだよ。」


初めて、精霊王が出て来ないという事態に陥った。

「こういう場合はどうすればいいんだ?」

「出直すとかかなぁ……一応、まだ【土精霊の微笑】はストックがあるし、

もう一回投げてみてもいいけど、どうしよう?」

どちらにするか決めかねていると、詐欺師が話しかけてくる。


「ヅガ、この穴に魔法で水を流し込んで。」

「何でだ?」

「ちょっとね……」

よく分からない詐欺師からの頼みだったが、付き合ってやることにした。

「水よ。深き生命の源よ。強大なる者に破滅の足音を聴かせたまえ……

ポイズンレイン!」


その魔法により、穴に毒の雨が降り注ぐ。

「どの位、降らせればいいんだ?」

「しばらくそのままでいいわ。」

言葉通り、雨を降らせ続けてから十分が経過しようとした頃だった。


「いい加減にしろぉぉぉ!いつまで水降らせりゃ気が済むんだよ!」

穴から1mくらいあるハリネズミが、叫びながら飛び出してきた。

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