第217話 初めての現象

俺がデカブツを倒して戻ってみると、フィルとリヴィが重なり合って倒れていた。

「何やってるんだ?」

「いや、ちょっとね。」

フィルはそう言って立ち上がり、リヴィも続いて立ち上がった。


「ドラゴンと殴り合ったって言うのは冗談にしても、とんでもない強さね。」

「本当だが?」

「はぁ?そんなの人間に出来るはずないじゃない。」

事実だしなぁ……と思いながら、言ったところで信じないだろうから、この話は

終わりにして、目的の場所へ向かう事にした。





「ここに何かあるの?」

【見識】で見た場所に合っているはずだが、あのデカブツを倒してから無駄に

数が増える事はなくなっていたせいで、何が原因かは分からない。

変な物はないか、しらみ潰しに探していくしかないかと思っていたら、

フィルが声を上げた。


「あれ、もしかして……魔鉱石?」

フィルの視線の先を目で追うと、鈍く黒い光を放つ鉱石があった。

武器に加工した物は何回も見ているが、鉱石そのものは初めて見た。

何て言うのか、思ったよりも禍々(まがまが)しい感じがする石だな。


三人で近くに寄ってみると、急に【見識】に反応が出た。

「うわっ!」

「気持ち悪っ!何これ!?」

そちらに気を取られてると、フィルとリヴィが悲鳴を上げたので、再度そちらを

見ると、魔鉱石からスプリガンが生み出されようとしていた。


「ふっ!」

何が起こってるかを把握する前に、俺は剣を抜いて石を斬っていた。

すると、体が出来る途中のスプリガンは黒い煙になって消えていく。

その光景に、俺はある言葉を思い出した。


”何故そのような鉱石があるのか、意味を考えるがよかろう。”


神だという老人に教えられた事……なんで今まで忘れていたんだろうか?

「フィル……」

「ん?」

「この魔鉱石っていうのは、どんな石なんだ?」

「どんな石……そうだね、鉱石自体は普通の少し硬い程度の鉱石と同じだって

言われてるけど、他の鉱石にはない特徴があるんだ。それが、魔法の力を

溜め込み続けるっていう事。」

「溜め込む?」

「そう。魔石だったら壊せば魔法が発動する時に放出するけど、魔鉱石は

壊れても溜め込んだままになるんだ。そして、溜め込んだ量が多ければ

多いほど硬度が増すんだよ。まぁ長年かけて、ゆっくり吸収するから加工前に

しこたま魔法をぶち込んでも、気分程度しか硬度は変わらないけどね。」


そんな違いがあったのか。だが、それがあの忠告に関係してくる理由はなんだ?

魔法の力を溜め込むという事に関係しているのか?

「それにしても、これどうしよう?」

リヴィが魔鉱石を指差していた。


「……二人とも、ここで見た事は不用意に話すな。」

「何で?」

「魔鉱石が魔物を生み出すなんて急に広がったらパニックになる。」

「それもそうだね。それに今まで平気だったのに、急にそんな異常事態が

起こるなんて誰も信じてくれなさそうだし。」

教えるにしても、絶対に信用の置ける人物にのみとの約束を交わして、

村へと戻る事にしたが、問題の魔鉱石は念入りに細切れにしておいた。

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