第216話 森の奥で
「でぇりゃあ!」
「ギギギ!」
フィルが斧を振り回す。
「あ~もう!」
リヴィが弓で射る。
走り続けながらスプリガンを攻撃していくが、進めば進むほどに数が
多くなっていく。
「ねぇ、この先に何があるのよ!?」
「さぁな。」
「え、何も分からないで走ってるの!?」
その正体は俺も知りたいくらいなんだがな。
しばらく襲われながら走り続け、目的の場所近くまで来た時だった。
「デカいな。」
「スプリガンってこんなに大きかったっけ!?」
「そんな訳ないじゃない!今まで散々見たでしょ!」
俺達の前に立ち塞がったスプリガンは5mほどだろうか、サイクロプスと
同じくらいの巨体だった。
「ギィィィィィィ!」
やたらと五月蠅くこちらを威嚇してくる。
「逃げましょう!こんなの勝てないわよ!」
「問題ない。」
どうやら【見識】で確認する限り、こいつの後ろに問題の場所があるみたいだし、
さっさと倒していくとするか。
「え……えぇ!?いやアンタ「もう無駄だって。」」
リヴィは巨大スプリガンに向かって、普通に歩いていく次哉を止めようとしたが、
それをさらに止める声がフィルから聞こえてきた。
「いや無駄って!いくら何でも酷いじゃない、仲間じゃないの!?」
「え?仲間だけど?」
「それを見捨てるなんて、そんな冷たい態度取るようなヤツと思わなかったわ!」
「見捨てる?誰が誰を?」
微妙に噛み合ってない会話に、二人が二人とも相手の言う事を理解しようと
脳みそをフル回転させようとした最中、ついに巨大スプリガンが次哉に向かって、
信じられないほどの跳躍を見せ、押し潰そうとしていた。
「! 危ないっ!」
「っと待って!」
思わず次哉に駆け寄ろうとしたリヴィを、後ろから押し倒す形でフィルが止めた。
その瞬間、巨大スプリガンが着地し、地面がヒビ割れて揺れを生じさせた。
「……あ。」
あの質量に潰されて原型を留めていられるはずがない。目の前で、しかも自分を
助けてくれた恩人が死んだ。その事実に動けなくなるほどの衝撃と、標的を
自分達に変えた巨大スプリガンが、二人の方を見て笑った事に、恐怖よりも
屈辱を覚えたリヴィだったが、
「どこを見てる?」
「ギ!?」
次哉の声が響いたと思うと、驚いた巨大スプリガンが勢いを付けて振り向き、
上半身だけが独楽こまのように回転して、下半身と別れた。
「へ?」
「……ギ?」
地面に落ちた上半身からは一言だけ、自分が斬られた事に気付けなかった
のだろう、どうしてこうなっている?そう疑問が含まれた鳴き声が上がったきり
動かなくなった。
「だから無駄だって言ったじゃん。」
背中に圧し掛かってる、全身鎧のせいで結構な重量になっているフィルが
言った。
「兄ちゃん、ドラゴンと殴り合い出来るくらいだしね。本気出したら、
ボク達が止める事なんてできないよ。」
「はぁ?」
いきなりドラゴンと殴り合いしたとか、意味が分からない嘘を言いだした
フィルを、大丈夫だろうか?そして、早くどいてくれないか?と
思っているリヴィだった。
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