第213話 エルフの村
「何だよ、お前ら。」「うわ、知らない人だ!」「お姉ちゃ~ん!」
「漏れる~……」「嘘でしょ!ちょっと我慢して!」
騒々しい。
ヘリオという子供を助けた後、奴隷商人に捕まっていたエルフ――名をリヴィと
いうらしい。が住んでいる村へ送って行くことにした。
「それで?アンタ達はどこに行こうとしてたのよ?」
「ノーム様のところだよ。ちょっと宝石を貰えたらと思って。」
神鉱石に関わるドタバタを、かい摘んで説明した。
「ふ~ん、大変ねぇ。」
「あぁ、本当にな……」
さっさと力を貸してくれれば、有難かったんだがな。
「あんまり文句ばっか言っちゃダメよ~?こういうのは楽しまなきゃ。」
スターナが笑顔で小さくガッツポーズを取り、こっちを見てくる。
「楽観的だな。そういう方が、気も楽なんだろうが。」
「前向きなのは、いい事です。」
そして、しばらく歩き続けていたが、一向に村は見えない。
「結構遠いのか?思ったよりも遠いんだが。」
「もうちょっとだけ歩くわね。」
さすが、エルフというところか。森の中は草木が生えて足元が取られやすく
歩きにくいにも関わらず、何の障害物も無いように歩いている。
さらに一時間くらいだろうか?歩いたところでリヴィが立ち止まり、
こちらを見た。
「ここよ。」
「何もないである。」
サーシャが言う通り、リヴィが差した先には、森の風景が広がっているだけで、
どうやっても村があるようには見えない。
「ふっふ~ん、普通じゃ村が見えないのよね~。」
そう言って、何もない空中に手を翳かざすと、空間が歪み始めた。
俺達はそこに入っていくよう促され、歪んだ空間に足を入れると、
いつもの、ヒュン!という音とともに転移し、一瞬で村の入り口に辿り着いた。
「驚いた?」
「あぁ。」
後ろから、驚かせるのに成功したのが嬉しかったのか、少しだけ高くなった声で
リヴィから話しかけられた。
「今のどうなったの?」
「光の森は、あちこちにエルフ用の転移結界が張ってあってね、特殊な方法で
指定した位置まで飛ぶ事が出来るのよ。」
と、喋っていたら、
「あ、リヴィ!?」
と村から一人走って来た。その後を追うように、どんどんと村から人が出てきて
囲まれた。結果、あの騒ぎだ。
「貴方方がヘリオを助けてくれたのですかな?」
「まぁ、そうなる。」
今現在、村長の家に連れられて事情を聞かれている。エルフの村に他の種族が
入ってくる事は珍しいらしいので、興味半分、警戒半分といったところか。
「いや、それなら何も問題ありませんな。時間を取って頂き、
申し訳ありませんでしたな。」
「ん、もういいのか?」
「えぇ、別に入ってくるの自体に制限は掛けておりませんし。」
村長の質問に答えるのも含め、時間を使ってしまったので、今日はこの村で
泊まってもいいだろうか?という質問にも構わないとの返答が来た。
この世界のエルフは他種族に対して、中々に寛容らしい。
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