第212話 光の森

山から歩き続けて五日、森の入り口に辿り着いた。

「ここが、光の森って呼ばれてるところだよ。」

その森はかなり大きく、見渡しただけでは端から端が認識できないくらいだった。


「本当に一日で抜け切れるある?」

「それは大丈夫。普通じゃ無理だけど、向こう側に抜けるまでに、森が薄くなってる

ところがあるんだ。」

「それはどうやって分かるんですか?」

「んっとね、と……」

フィルは自分の荷物を入れている袋をゴソゴソと漁りだした。


「あった。これだよこれ。」

「それは何かしら~?」

手にしていた物はコンパスかと思ったが、磁石は付いておらず、代わりに砂鉄の

ような物が入っていた。


「これは【土精霊の微笑】を砕いたものが入っていて、この森の入り口位から、

ずっと一定方向に集まるようになっているんだ。」

確かに、砂鉄のようなものは傾けている訳でもないのに、一か所に

集まったままだった。


「それは磁力に引き寄せられてるんじゃないよな?」

もしそうだったとしたら、何か体に影響が出そうで、心配だったが、

「磁力じゃなくて、ノーム様の力に引き寄せられてるんだ。」

「ノームの?」

「そう。【土精霊の微笑】にさらにノーム様の祝福を受けさせて、加工すると

作れるんだ。加護を受けてる、ドワーフだから作れる逸品だよ。」

と、誇らしげに胸を張る。


「じゃあ、こっちの方角に進めばいいのね?ちゃっちゃと行きましょ。」

「そうですね。」

そして森に入ろうとした時、

「だ、誰か!」

叫び声が聞こえた。


そこに急いで向かうと、沼にはまったエルフの子供がいた。

「た、助けて!」

「動かないで!」

どうやら底なし沼のようで、体を動かすたびに深く沈んでいっている。


「頼んだぞ。」

俺は他のメンバーに後を任せて移動しようとした。

「勇者殿、どこに行くんですか!?」

「あぁ――コイツらを全員始末しにだ。」

隙を突いた気でいたのか、背後に迫って殺気を隠そうともしない物を

剣で振り返り様、横薙ぎに斬る。


「げっ、スプリガン!」

「知ってるのか?」

「ずる賢くて、罠に獲物をかけて食べる習性を持った魔物だよ!」

なら、このエルフの子供は餌にするつもりだったのか。


「間一髪ってところだったか。」

残りは九匹、こちらとの距離を詰めるかどうか考えているのか動かなかったが、

俺が近寄ろうとすると、石を投げてきたので弾き返す。

その間に逃げ出そうとするが、走って追いつき、後ろから斬り付けていく。


「ギィ!」「アギャ!」

段々と数を減らし、残りは一匹になったところで、奥の方からスプリガンに

向かって、矢が飛んで来た。

その矢は脳天に当たり、断末魔を上げる事するせずに、その場に倒れこんだ。

「あれ?……あっ!」

矢を放った人物が現れたが、それは久しぶりに見た顔だった。





「チュクァ~、どこ行ったの~!」

さっき出会った人物と全員の元に戻る途中、声が聞こえてきた。

「ここだ!」

「あ、いたいた!も~、どこまで追って……あれ?」

「アンタたちもいたんだ。久しぶり……って、ヘリオ!一人で森に行くなって

言ったのに、何で約束破るの!」

「ご、ごめんなさい……」

ヘリオと呼ばれた子供を叱っているエルフ、それは、奴隷商人の屋敷で会った

女エルフだった。

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